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今のところ映画の話をしています

映画「羅小黒戦記」に落ちた2か月を振り返る

吹替版「羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来」全国公開2か月、おめでとうございまーーーーす!!!!!(遅い)(遅い)

字幕版が東京のほうで話題だったらしいし近くの映画館でやってくれてるから観にいくかー、くらいのテンションで油断して観にいったら百万年ぶりに沼に落ちてしまい生活が大変なことになったので備忘録代わりに書き残しておこうと思います!ただの日記です考察とかはできません、まだ沼で溺れてるから!がぼがぼ

文章の句読点が少ないのは沼から息継ぎのために顔を出した瞬間に一気に喋ってるからですね。がぼがぼ

 さあいってみましょう沼の底からこの2か月を振り返る!ネタバレは無いよ!(日記だから)

・映画館にめちゃ通った(当社比)

これまで映画館で映画見た最大記録は「もののけ姫」の3回、次点が「紅の豚」「風立ちぬ」の2回だったんですが(2回見たのは他にもあるかも)、それを軽く突破しました。吹替版を6回、12月から公開された最新字幕版を3回の計9回!ひゃー!2020年の夏以降、暇になったのも奏功しましたね(奏功?)。ていうかわりと身分安泰な会社員をさせて頂いておりまして、2020年はマジで暇だった。そこに滑り込んで爆発したのが「羅小黒戦記」だったというわけですね、はい。いや界隈には(界隈とは)去年の初期字幕のころから通ってらっしゃる猛者も大勢いらっしゃいまして9回とか全然ひよっこなわけですが、個人的には非常に思い出深い鑑賞体験になりました。ていうか円盤が出るか分かんないからさー!目と耳に焼き付けようと必死なんですよこっちは!!!あとお世話になった映画館、音響監督が直々に調整したという特別音響上映(だったっけ)だったんですよね、それで効果音とか台詞がめちゃくちゃ聞き取りやすくて心地よくて、映画館に通うのが楽しかったのもありました。ほんとあの映画館には感謝しかない。土下座!(土下座されても迷惑だろ)

・ペンタブを買った(我ながら謎)

いや絵描けないのになんで買ったの。自他ともに認める絵描くの下手会社員ですよ。なんで買ったのペンタブ。でも絵なんか仕事でも描かない自分のようなポンコツでさえなんか描きたい!と思わせる「羅小黒戦記」ってすごいね!ツイッターピクシブにファンアートが溢れてるの分かるよー!て感じです。ちなみにペンタブで何をしているかというと本当に絵が描けないのでスタジオジブリが提供している場面写真をひたすらダウンロードしてそれをトレースしています。線画+塗りつぶしはなんとかできるようになりましたが背景がほんとうに大変、どうやって描いてあるのか見当もつかん。まあでも楽しいです。学生時代以来のペンだこができたし。うける。

・生まれて初めて同人誌を買った

学生時代には同人活動をしている友人もいたので文化というか活動内容というかそういうのはだいたい把握していたんですけれども、自分が何かにハマることが無かったので遠くから生暖かく見守っていただけでした。なけなしの所持金をつぎ込むほどの対象に出会えてなかったというのも大きい。しかしながら今回「羅小黒戦記」に足をとられてスっ転び、ファンアートを漁り続ける日々、そしていにしえのオタクだから紙で持ってないと不安、気付けばネット巡回ルート上で見つけた紙媒体を片っ端からカートに入れていたのでした!大人ってお金に物を言わせがち(お金って便利だね!)!!だって同人誌は一期一会だから!しかもたぶん吹替版が公開されてからファン層が一気に広がったおかげで人気絵師・人気キャラの本はマジですぐ無くなる。再入荷通知が間に合わないくらいの勢いで売り切れる。再販してくださる描き手の皆さまには本当に感謝しかない。土下座!(だから土下座されても以下略)あと地方在住のオタクのために通販してくださる皆さまにも感謝の土下座!いや一人で土下座しててもしょうがないので、せめてものお礼の気持ちに感想を送りますね…。

・生まれて初めて二次創作を始めた

で皆さまの熱い二次創作や考察に影響されまくった結果、二次創作に手を染めました!絵は相変わらず描けないので、文章です。雰囲気小説です。たぶんすべて監督の掌中で踊っているんだろうなと思うのですが、全部のキャラが生きてるんですよね、だから二次創作がはかどるはかどる。このキャラはこう考えたのかな、このときにこういう行動を取るならあのときは何をしたかな、みたいな妄想がいくらでも出来るしどのキャラでもできる。すげーな監督。しかも映画も続くし映画の基になったWebアニメも続くしスピンオフ漫画も続くし、今後の供給が過大なんですよ!(過大て言うな)どうなってるん監督。天才か?(天才だよ)

SNSに専用アカウントをつくった

ファンアートの巡回も忙しいし二次創作をうっかり始めたせいで考察をどっかに放流したいしで、まさかの「羅小黒戦記」専用アカウント作成。生まれてこの方ROM専だったくせに…(←ROM専ていまでも通じる???いにしえのオタクが令和にうっかり甦ったせいでよく分からない)。何を隠そうこのブログもそのうちのひとつですね、「羅小黒戦記」ではなく映画専用ですが。ちょっと集中的に映画を観始めてから出会ったのも良かったのかもしれない、演出とか脚本の上手さに目が行くようになっていたのでより楽しめたのはあります。それで映画について語りたくなってブログ開設に至る、と。ほんとに暇だなオレ!!

・まだまだ続きそう

なにが恐ろしいって上記の全てがまだまだ続きそうなことですよ!公式の供給が潤沢すぎるんよ!!(さっきも言った)二か月前にたった一本の映画を観たせいで!!!しかしわたくしは知っている、同じような悲鳴を上げているナカマたちが全国にたくさんいることを!!みんなー!生きよう!!!

 

いや長いなこの記事。もういいってわかったわかった。…それでは円盤の発売を祈念して、今年も沼の底で騒いでいこうと思います!がぼがぼ

再見!!

映画「天気の子」を観て大人の役割を考える(かも)

地上波ノーカット放送ありがとうございます!観ました!さっそくですが観ながら思ったことを書きとめたいと思います。

・光の表現が神懸っている
・俳優、声優の演技が素晴らしい
・脚本と演出にひとこと言わせろ(ひとことではない)

以上のような内容になっておりますので、解釈不一致の可能性がある方はご注意ください!!!あと新海誠の作品、本作を入れても5本くらいしか見たことないので、あくまで本作だけを観て思ったことを書いています。監督のこと分かってねーな!というご意見があるかもしれませんが、そう思ってしまいそうな方は回れ右したほうが、と申し上げておきます!!

いいですね?警告しましたよ???

 

いやー、光の表現に前作からさらに磨きがかかってますね!特に雨粒。まあ雨粒とか水、実質の主役みたいなものなので力を入れてるんだろうなとは思いますが、いや綺麗でしたわ。絵に関してやりたいことがハッキリしてて良いですね。もっと雲の上でのダイナミックな絵も見てみたかったですけどね。けっこう引きの絵が多かったですね。

あと、小栗旬と本田翼が思いのほか良かったです。これまであまり思ったことなかったけど、二人とも声が良くて、しかもちゃんと声に演技を乗せられる俳優だったんですね。耳がいいんだろうな。特に小栗旬、梶さんと同じ場面で喋っててもあまり違和感なかったので感心しました。いやそんなに声優さんとか詳しくないので雰囲気で書いてますが。

 気になることと言えば、梶さんが声やってた刑事の髪型が気になって話が頭に入らなかったんだけどなんなのあれは。何を狙ってるの。大人の職業人を舐めてんのかとか思っちゃったよ。キャラデザやったの誰よ???(調べる気はない)言っとくけど「良識ある大人」のカリカチュアを仮想敵にするのもう流行ってないからな!!感情的・利害関係的に対立する相手に対して単純に反発するんじゃなくて(もちろん"子供"はそれしかできない、という考えは分かるけど物語として)、ギリギリの隙間を通すみたいに繋がれる点を探してよりよい世界を目指す、みたいな話をしてくれよ!!!そこを作り手(つまり"大人")がサボるな!とか思っちゃいましたね。大人を単純な敵として反発するのは簡単だけど、実際には世間の大多数を占めるのは「良識ある大人」なわけで、その人たちが「子供の選択」に対して話し合う余地もない、ていうのは子供から見てもなんの希望にもならんでしょ。むしろ世界に絶望するだけでしょ。梶さんの演技自体はすごく誠実で良かったと思いますが、それでよけいに見てる側は混乱するんよ…。

で「良識ない大人」のほうですが。小栗旬のほう。搾取されて生きてきた大人が子供を(ほとんど善意からだとは解釈できるけど)搾取するなよ、ていうね。食と住を提供したのは偉いと思うけど、ある程度歳のいった大人(しかも子持ち)がやること他にもあるだろ!?いや帆高くんに対する態度としては悪くないんですけどね、ああいう仕事してたら警察とかにツテあるだろ、とか思っちゃうんですよね。もっといろいろ上手くリスク管理できないとあんな商売続けられなくない??家出少年を匿うのなんかめちゃハイリスクじゃん!だいたいなんであの船乗ってたん?あの仕事、そんな暇ある?まあなんていうか、全体的に、脚本が甘いなと。

そういえば本田翼がやってた女性の就活はなんの話がしたかったのか。分からぬ。原付で(文字通り)ジャンプするときのカタルシスを高めるための抑圧として入れたのかな、とは思いましたが、なんであんな類型的な就活描写だったのだ、彼女のキャラ付けにさえなってなかったぞ。

あとあの拳銃はなんだったんだ。結局、子供が大人に対抗するには大人の武器を借りる(盗む)しかないんか。もうちょっと知恵と勇気と友情でなんとかしなよ、凪くんとかいいお友達がたくさんいたじゃん。大人が持ってない、いつか失くしてしまったような武器を使えよ(それが知恵と勇気と友情だとは言わないけど、なんかあるだろ)。子供に寄り添うような、エンカレッジするような作品にしたかったのかもしれないけど、こういう細かいところで大人の論理を通すから不完全燃焼なんですよ!!ていうかアメリカならともかく、日本を舞台にした作品であんな無造作に拳銃をただのアイテムとして消費するとは思わなんだ。東京ってそんなに拳銃おちてるの?田舎者が知らないだけ??

ストーリー全体としてはあれですね、"無かったこと"にするの大好きだな新海誠!て思いました。大人の責任の取り方くらい、ちょっとは考えなよ…。それは帆高くん(つまり子供)に「これで良かった」「君は悪くない」て言ってあげるだけで済むことではないでしょう。これは前作「君の名は。」を観たときにも少し思ったんですが、今作でそれがよりはっきりしてしまったというか。そのせいで新海誠作品の少年少女は成長しないんですよね。そのままでいい、というのはこれから成長すべき子供にとって必ずしも良い言葉ではないはずなんですよ。そう言って欲しい、という欲望は肯定されても良いと思うけど、その言葉自体を無条件に"良いもの"とするのは違うんじゃないかな!

あーもう長くなったのでこのへんで!上に書いたようなことはいろんな人が語りつくしているだろうなとは思いましたが、まあ自分メモということで。とりあえず新海誠は脚本を他の人に任せてみたらいいんじゃないかなと思います!!!余計なお世話だね!

では!!!!!

映画「新感染半島」を観て今年の抱負を考える(不穏)

明けましてポストアポカリプス!!!(挨拶)

怒涛の2020年が明けて新年一本目に相応しい映画、、、ということで観てきました「新感染半島 ファイナル・ステージ」!

あの「新感染」の続編?????とずっと思っていたのがようやく公開されたのでとにかく感無量です。「新感染」は、当時、韓国映画をほとんど見たことがなく、ホラー映画もJホラー止まりで全く見ていなかったのにも関わらず、ぬまがささん(沼の見える街 (hatenablog.com))のレビューを読んでどうしても見たいけど怖いので友達についてきてもらって、台風が近づく不穏な天気の中、映画館に駆け込んだ思い出の作品です。

で今回の「新感染半島」。ポスターのデカすぎる文字に度肝を抜かれましたが、鑑賞直後に見直したらあれくらいで丁度いいな!と思うくらいのテンションMAXド派手サバイバルアクション映画でした!!!マッドマックスに生きのいいゾンビを大量投入したみたいな。いやマジで。

ところで"半島"ていうても北半分はどうするんだろう、と余計な心配をしていたらわりと冒頭でテキパキ説明されたので不謹慎ながらちょっと笑いました。

話としては比較的シンプルなポストアポカリプスものだと思うんですが、ちょっと面白いのが、半島「以外」の世界は、無事というかほぼ平常状態なんですよね。半島だけが壊滅的な打撃を受けている、その中でのサバイバルを描くわけですが、「外部」が確実に存在するがゆえの絶望みたいなのがポストアポカリプスものとしては新鮮でしたし、その「外部」を象徴しているのがアレなのとか、極東アジアの"気分"をビビッドに映し出して鑑賞者に突きつけるようなつくりが上手いな、と感心しました(偉そう)。

だからこれは、故郷を半永久的に失って流浪する民族の物語でもあるんですね。二度と故郷に戻ることはできない、という状況が徹底的に描かれ、それによって絶望を深めていく地獄巡りの道行きにもなっています。でもその土地に人間が(どんな人間であれ)生きている以上、単純な地獄ではあり得ない、というのがまた切ないんですが。ゾンビ映画の続編で文明崩壊まで行くのなかなか思い切ったな、と思っていたんですが、いまの世界を映しとろうとすると必然だったのかもと感じました。

ポストアポカリプスを扱った作品(映画、小説、漫画など含め)のテーマって、文字通りの意味で「汝が為すべきことを為せ」だと思うんですが。状況や能力によってさまざまな「為すべきこと」が、平時よりも剥き出しの状態で迫りくるときに、どういう選択をするかで運命が分かれていく、というのが明確になるというか。そういうことを真正面から扱うのほんとに偉い。演技とか演出に自信がないとこんな直球なメッセージを扱えないよね。いまの日本の映画で一番直球なのが「鬼滅の刃 無限列車編」なの、まさにそれって感じですよ。最高の作画とキャラで剛速球を投げてるの、日本映画だと「鬼滅の刃」だけですよ(※個人の意見です)。

 

でそれはそれとして(でもないけど)、主演の元軍人、生き残りの母、姉妹がはちゃめちゃにかっこいい!インタビュー記事↓

大ヒット韓国映画の続編『新感染半島』主演カン・ドンウォンにインタビュー、「女性や子どもの活躍がいいんです」 | News | Pen Online

にもいくつかスチル写真(?)が載っていますがビジュアルすごくないですか!!特に姉妹!!やば!写真は無いですがほかの文字通りヤバいお兄さんたちも言動・ビジュアルともに最高でしたよ!

ポストアポカリプスといえばマッドマックスですが、脚本や演出だけでなく、ビジュアルへのこだわりも影響を受けているのかなと思いました!いやそれも演出か。とにかく画面が派手でパンチが効いてて、ワーワー言いながら見るのが楽しい、エンタメ性がすごいとことか!はー、楽しかった。感謝!

あ、今年の抱負?えー

・生きる
・人に優しく

ですね!みんな生きよう!

では!!!

2020年に観た映画についての覚書

■2020年初見の映画リスト!!

 いままでに見てない映画たくさんあるなーと実感したこの数か月でした。

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なんというかポリシーのないセレクションですが、GAO!の無料配信とBS放送や地上波のテレビで見れるやつを手当たり次第に見たせいです。あと、ハリウッドの大作が軒並み公開延期になったおかげで、近所の映画館が名画座みたいになってその恩恵も受けました。ありがたい、、、(土下座)。

あとはちょっとメモ程度に。


以下、印象に残った俳優陣

■ほ、惚れた~~~!!!
「ボーダーライン」のベニチオ・デル・トロ
「ドライヴ」のライアン・ゴズリング
アトミック・ブロンド」のシャーリーズ・セロン
探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点」の松田龍平

とにかく強くて(物理)、情に薄そうな(実際にはかなりアツい)人が好きみたいですね。身近にいたらだいぶイヤですが。

■お友達になってください!!
「シング・ストリート」のジャック・レイナー
「湯を沸かすほどの熱い愛」の杉咲花

二人とも、つよくて優しいお兄ちゃん、お姉ちゃんでしたね、、、(涙)

■そんな台詞を言いながらそんな表情をされたらこっちの心臓が持たない
「ムーンライト」のトレヴァンテ・ローズ
「TENET/テネット」のロバート・パティンソン
※番外編 「羅小黒戦記」の風息(CV:郝祥海 / 櫻井孝宏

持ってかれた、、、何かを、、、
(あなたの心です)(やかましいわ)

 

以下、印象に残った監督(製作陣)

■「ボーダーライン」息をのむほど美しいメキシコの空撮や砂漠の夜景、バキバキにキマった劇伴、スタイリッシュな脚本、すべてに最高の美意識感じる。まあ記事を一本書いたくらいには感銘を受けました。

■「ブレードランナー」いまさら語るのもおこがましいですが、ほぼ40年前にこの高密度の世界観、隅々までデザインしつくされた背景がヤバい。しれっと露店でタヌキ売ってて、欧米ではエキゾチックな動物っていうのホントなんだなと思いました。

■「羅小黒戦記」若くて才能あるクリエイターが、情熱と良い環境で素晴らしい作品を作り上げた、っていうのが素晴らしいです。創造性と持続可能性、将来への堅牢なビジョンを感じさせます。Z世代てやつですかね。かなり作家性の強い監督だと思いますが、作品全体としてはものすごいキャッチ―てのが興味深いです。あ、宮崎駿か。

 

それでは紅白見るのに忙しいのでこのへんで!

良いお年を!!!!!

映画「ウルフウォーカー」で頭が痛くなるほど泣いた

はあ~~~~良かったですねえ~~~~圧倒的なビジュアルに最&高のガールミーツガールでした~~~~はあ~~~~

とか書いて終わってもいいんですが(少なくとも鑑賞直後はそんな気分だったんですが)、少し日が経ってやや落ち着いて言語化できそうなので備忘録として残します。でも一回しか見れてないので記憶が曖昧で雰囲気だけで語ります。

※致命的なネタバレは無いと思いますが、終盤の展開についての内容を含みますので!

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ネタバレ除けにおススメの副読本を置いておきます。

books.bunshun.jp

狼が自然の中で果たす役割について理解が深まります

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www.hakusuisha.co.jp

狼と人間の関わりの変遷を概観できます。フルカラーの図版が多く収録されており、さらっと読めるわりに情報量が多い。

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ここから本題。

 絵の美しさとかは、識者の皆さまがいろいろなところで語ってくださっているのであまり書くことがない。本当に絵画が動いてて目が幸福であった。背景の隅のほうで動いてる線画の羊でさえ、可愛らしく愛おしいのである。すべてのシーンをコマ送りで見たいと思わせる美しさだった。ポストカードセットふたつ買った。

さてそれで、そういう美しい絵で語られる物語の中で、特に印象に残った場面について。

「Running With The Wolves」

 AURORAの劇中歌が流れる、序盤で最も盛り上がるシーン。二人の女の子が仲間を得て、すべての抑圧を振り払って、鮮やかに色づく自然の中を疾走する最高に美しい場面で、抑圧と解放の落差がほんとうにキツくて泣いた。こんな解放は、ロビンが人間の社会に生きる限り決して得られないものだ。17世紀のアイルランドだけでなく、おそらく現在でも。だからこそこの瞬間のかけがえのなさが光るのだけれど、それにしても辛い。制作陣がこのシーンに込めた祈りの深さは、そのまま現実との乖離を表しているのだと感じて、かつて子供だった自分と今の子供たちのことを想って泣いてしまう。

そしてAURORAの透明感と浮遊感、力強さが同居した歌声が、空へと昇る祈りの声そのもののように聞こえるのだ。どこまでも遠くへ、自らの爪と牙を研いで、月の明るい夜に走る。この歌が既存曲だったなんて信じらんない、最先端のクリエイターたちの共振に震えるわ。

 

"I'm afraid"

自分はもう大人になってしまったので、最初から最後まであのお父さんの心情を思って心臓が締め付けられそうだった。ロビンを安全なところで守ってやりたいという大人として当然の思いがロビン自身の願いとすれ違う描写、ロビンがお父さんを想う気持ちもまたうまく受け取れずに悩みを深める描写、ひとつひとつが丁寧で、切ない。ロビンは聡明で強い女の子だから抑圧的な庇護は必要ないのに、それを変えられない、お父さんもまた抑圧的な体制の下で苦しんでいるのに。

そのお父さんが、初めてロビンに対して率直な心情を吐露するシーンでもうダメだった。自分の弱さを認めてそれを言葉にして伝えるのは勇気の要ることで、相手が自分の子供なら尚更だろう。けれど、この勇敢な狩人はその勇気を持ち合わせていたし、そういった意味ではロビンと強い信頼関係を築いていることが伝わって、いたわりと愛の深さに号泣必至なのだった。

 

あと子供と動物がぐいぐい動くの楽しかったですね。動きの緩急が予測不能な感じがよく表現されていて、彼らがじゃれついているだけの場面をずっと見ていたいなと思いました。

地方在住なので映画館で見れないかもとどきどきしていたのですが、無事に近所で劇場公開されてよかったです、、、ありがとうございます、、、(土下座)

では!!!

映画「イット・フォローズ」に懐かしいJホラーの残り香があった

「Jホラー」っていう単語、まだ生きてる?みんな分かる???

1998年の映画「リング」以降、「リング2」「死国」「うずまき」と続いて劇場版「呪怨」くらいまでの間、国産ホラー映画がホラー映画業界(?)を席巻していた時代がありましたね。「回路」も入れていいかな、、怒られるかな、、、

上の文章を書くためにちょっと検索しただけで当時の記憶が蘇ってうっすら冷や汗をかくくらいには、リアルタイム世代です。友達同士で子供だけで映画館に行くようになっていた頃で、家族が興味を示さないホラー映画をよく見に行っていました。「リング」がまさにそうなんですが、もともと苦手だったスプラッタ系の描写が少なくて、演出やストーリーの面白さで恐怖を生み出しているのが新鮮だったのを覚えています(当時はそこまで言語化できていなかったですが)。

で、今回の(今回の?)「イット・フォローズ」ですよ(前置きが長い)。

舞台はデトロイト自動車産業が衰退して見捨てられたような街に住む、明日なき少年少女たち。地元経済が崩壊しているので大人たちは出稼ぎでほぼ不在。子供たちだけが、閉塞的な街の中に閉じ込められていてどこにも行けない、そういうところが舞台のホラー映画である。

主人公がうつされてしまった「それ(It)」は、どこまでもついてきて、追いつかれたら死ぬのだというから性質の悪い死神のようなものだろうか。「それ」は人間の姿で、徒歩でやってくる。死を避けるためには、追いつかれないように逃げ続け、他の誰かに「うつす」しかない。

「それ」は静かに、気付いたらすぐそばにいて、歩きながら近づいてくる。人間の姿なのに明らかに怪異と分かる強烈な違和感を放ちながら。

主人公たちの視野の外、画面の隅をゆっくりと歩く人影。黄昏時の窓の外に見える影は、人間だろうか?それとも、知った顔に擬態した「それ」だろうか?

主人公が陥る疑心暗鬼、追いつかれるのではないかという不安、それらの演出がスタイリッシュで、端正な品があり、それでいてじっとりと陰湿で新鮮な驚きがあった。それらが、デトロイトという街の中で暮らす閉塞感と密接に結びついていることが丁寧に描写されていて、「ここを知らないやつに何が分かる」とでも言われそうなドライでシビアな感覚が鮮烈で、恐ろしくも美しい。

主人公たちが頼れるものは何もなくて、彼らの狭い世界でなんとかするしかないというあまりにも孤独な様子も印象深い。そして「それ」が擬態する人間は、主人公たちにとってどういう存在なのか?〇〇(ネタバレ配慮のため伏せます)の顔をした死神とは何なのか?いろいろ考えていて思ったのは、ここで具現化されている孤独は、程度の差はあれ、子供から大人になる途中で誰もが経験することなのかもということで、自分がどこに所属しているのか分からないし、大人は頼れない、手持ちのリソースもない、ただ同じ孤独を共有する友人たちと慰め合いながら、そしていつかは子供だった自分を切り捨てながら、大人になっていくときの寄る辺なさ。

それで、そういう人類存在に普遍の不安や恐怖と、日本という土地の土着的トラウマを融合して新しい感覚だったのが、世紀末のJホラーだったのではないか(たぶんすでに言われていることでしょうが)。良いホラーというのはそういうものかもしれないが、この「イット・フォローズ」にも同じ良さがあるなと思い至ったのである。

怪異が現れようが現れまいが、デトロイトの荒涼とした風景に寒々とした気持ちにならざるを得ないし、それに慣れ切った子供たちの様子が切ない(こちらの勝手な感傷ではあるのだが)。そこに、確実に近づいてくる死の予感。将来が閉ざされていることは承知の上で、それでも、何も持たない彼らが寄り添って、「それ(It)」と戦い生きようとする勇気と悪足掻きに心を打たれるのだ。

・・・

まあ見てる最中は怖くてそんなこと考えてなかったですけどね!!!怖いよ!「それ」、徒歩だからゆっくり来るんだけど頑丈なので扉とか破壊して侵入するからね!!見ながらじぶんちの逃げ道を考えちゃったよね!

あとは音楽がかっこよかったですねー!アナログ・シンセサイザーですって。不思議な浮遊感があって、作品世界の構築に大きく貢献していると思います。

ホラーに限らず映画でたまに多用される(?)大きい音とかのびっくり系演出が苦手で(主人公視点とかで必然性があれば良いけど)、本作はそれが無いのが個人的にハマった理由のひとつかもしれません。

ホラー映画、合わなかったときのダメージが他のジャンルより大きいので、選ぶのに慎重になってしまいあまりたくさん観れないのですが、これは見てよかったです。はい。

・・・

ところで、気に入った映画のレビューは基本的に褒めてるやつしか読まないので、そういったレビューの中でときどき「否定的な意見もあったけど」みたいな記述を見かけると「え!?否定する余地ある??美点がすべてを凌駕してるから欠点とか無くない???」ってなりがちです。

では!!!

映画「夜は短し歩けよ乙女」を観て百万遍交差点に胸を衝かれる

長編アニメーション映画「夜は短し歩けよ乙女」(監督:湯浅 政明)を見て、あまりの懐かしさに動悸息切れが生じて大変だったので語ります。

 
この映画、天才が適切な題材を得たら傑作ができた!って感じで素晴らしいですよね!原作のぐにゃぐにゃした虚実乱れた語りと勢いのあるストーリー展開、爽やかな余韻が湯浅監督の絵柄や演出とベストマッチだったと思います。

しかしながら、今回の記事はほぼ自分語りになります。ので、そこんとこよろしく。

いいですね?

はい。

 

当方、原作者の森見登美彦氏とほぼ同じ時期に京都市内に住んでいて、原作の小説に出てくる地名や寺社仏閣、四季の風物などは非常になじみがあり、隅々まで楽しく読んだ覚えがある。

原作小説が出版されたのは2006年、映画が公開されたのが2017年。この10年間で、「夜は短し歩けよ乙女」の舞台として登場する場所のなかで、もっともその様相を変えたのが百万遍交差点ではないだろうか。

2017年頃から、京大の石垣に沿って並べられていたタテカン(立て看板の略、らしい)に対して規制が厳しくなり、その数はすでにずいぶん減っていた(その後2018年に強制撤去などの具体的な措置が取られるようになり、現在に至るまでタテカン設置側との攻防が続いているようですが)。

記憶が曖昧だし記録も見つけられなかったのだが、このころには京大の百万遍交差点側の入り口が拡張されて、石垣自体も減っていたのではなかったか。

タテカンの撤去は2010年代の嵐のようなインバウンド需要をにらんでの景観整備の一環だったと記憶しているが(自分はすでに京都を離れていたのであまり知らない)、百万遍周辺の地価も上がったのだろうか、店もずいぶん入れ替わった。特に目立つ交差点に面した店は、ほとんどチェーン店になった。

あの威圧感のある石垣が減ってタテカンがなくなって、目立つお店が入れ替わってしまうと、もう別の風景である。いまの百万遍に行っても、懐かしいな、とはあまり思わない。京都に行く機会があってもなんとなく足が遠のいている。

ところが。

ところが、映画「夜は短し歩けよ乙女」の中で大団円のラストシーンを彩る百万遍交差点は、どうやら2006年頃の景色のようなのである。このシーン、背景がとりわけ丁寧に描かれているような気がする。長い夜があけて明るい光が主人公たちのうえに等しく降り注ぎ、ハッピーエンドを美しい思い出として焼き付けるような、そういう丁寧さ。何度も思い返しては細部の鮮やかさを増していく、そういう思い出の景色。

残念ながら自分には百万遍交差点に特別な思い出はないのだが(生活圏だったのでよく通りかかっていた)、あの頃、あの場所が特別な思い出になった人の記憶をのぞかせてもらったような気がしている。

原作者のささやかな感傷を、天才クリエイターが驚異的な精度で掬い上げたのだろうか?そしてそれが、あの頃のあの風景を共有する自分にまで届いた、ということなのだろうか?

少なくとも現在の百万遍交差点に足を運ぶよりも、そして自分の記憶の中の百万遍交差点を辿るよりも、映画「夜は短し歩けよ乙女」で描かれた百万遍交差点が懐かしい。小説を読むだけでは、そうはならなかった。これが映像化の威力というやつか。原作から入って、映像作品のほうに心を奪われたのは初めてだよ。まあ気に入った原作の映像作品はわりと避けていた、というのもありますが。

湯浅監督は、「夜明け告げるルーのうた」を映画館でみて良かったから、これは大丈夫かな、と思ったんですよね(偉そうですみません)。

ほんとうに、誇張でなく、百万遍交差点のシーンでは心臓がぎゅっとなったのであった。

いやー、良いものを見せていただきました!