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映画「バーバラと心の巨人」を観て孤独な嵐を迎え撃つ

はあ~~~これは良い~~~思ってたよりだいぶ良かった~~~

公開されてたときは普通にスルーしたけど(てか覚えてない)、その後どこかで見かけた原語版ポスターの雰囲気がすごくいいので気になっていた作品です!!!期待以上だった!!

むしろ日本版ポスターのあれは何なの!?中二病の痛みと孤独をなめてんのか??これは自身の内面の嵐や喪失への不安と恐怖に対する防御と反転攻勢の準備だからな!!!あのポスター発案したやつ、わが刃の露と消えよ!(中二病的怒りの表現)

…。

………………。

それはともかく。ポスター気になった人は映画のタイトルで画像検索してみてね!ぜんぜん違う雰囲気のポスターが出てくるから…いやマジで日本語版ポスターのテンプレ感にうんざりするんよ。真面目に売る気あんのか???いい映画なんだからさ~ちゃんと宣伝してあげてよ~ポスターや宣伝と内容のミスマッチは観客にとっても不幸だよ~~

ちなみに本記事、たぶんすぐネタバレする。ネタバレ回避して感想を書くのほぼ不可能。気を付けて!!!!

↓ネタバレ除けに(?)、原作漫画のリンクを置いておきますね!!!原題にもなってる英語タイトル、かっこいいね!!!!

www.shogakukan.co.jp

本作、まず舞台が良いのです。アメリ東海岸、すぐそばに森が広がる美しい海辺の街。海岸沿いの崖の上に建つ古風な家に住む三人兄弟の末っ子、13歳(?)のバーバラ。彼女の居場所は、分厚い雲間に光射す海辺、陰鬱な霧に沈む森、廃棄された停車場。こんな秘密の場所があったら良いのにと子供のころに一度は憧れるような、異界との境界でセンチネルとして巨人と闘う少女。彼女はなぜ、闘うのか?巨人とは一体なんなのか?

それから巨人の登場シーンも大変によい。製作のクリス・コロンバスはハリポタシリーズに代表されるようなファンタジー大作を多く手掛けているということで、その手腕が光っていた。ダークで切実な、手を伸ばせば届きそうな、目を凝らせば見えそうな、すぐそばにある異世界

さらにさらに、この映画では登場人物が主役を含めほぼ女性のみなんですが、みんなすごく良かった。主役のバーバラを筆頭に友人のソフィア、姉のカレン、先生もいじめっ子も繊細で強靭な演技が素晴らしかったです。

さてそれで、改めて、バーバラにとっての"巨人"とは何か?

疾風怒濤の時代を待たずとも、繊細に揺れる思春期のただ中に訪れる、試練と呼ぶにはあまりに切ない喪失。人生における困難から心身を守るにはまだ十分な力を持たない思春期の少女が、不安や恐怖に立ち向かう手段についての物語。誰もが、人生のどこかで必ず対峙することになる孤独な嵐、それに立ち向かう勇気を、できれば、傍らに友愛の温もりをください、という切なる祈りが、この映画には込められているのです。

バーバラ、自分の世界に閉じこもりがちではあるけど鬱屈はしてなくてとっても聡明なのが良いんですよね。丁寧な演出と演技で、何らかの困難に直面している、一風変わった愛すべき女の子として描かれています。彼女は自分の手中にあるものを良く知っていて、観察力があって、他人に対しても誠実であろうとしている。家族には甘えがちで(末っ子だからね)、でも優しい。目の前の困難に立ち向かう勇気と行動力がある。彼女は、人にはたった一人で闘わなければならないときがある、ということを完全に理解していて、それゆえに差し伸べられた手に対して時に冷淡になるんだけど、でもそれが良くないことだとも自覚している。差し伸べられた手は、バーバラを試練から遠ざけてくれるわけではなく、もちろん代わりに闘うわけでもなく、ただ貴方を温め、支えるものだと、そういうことなんですよね(号泣)。

悲壮な決意を固めて孤独な戦いに挑むバーバラと、彼女を理解したいと(ごく控えめに)歩み寄る周囲の人々、どっちの気持ちも分かるから、ほんとうに心臓がぎゅっっってなる。

なんかね、周りから見ればどんなに意味不明で、滑稽に見えても、本人にとっては切実で切羽詰まってることってたくさんあるじゃないですか。大人になったらそれを無視したり取り繕ったりするのが上手くなるだけで、そういうことっていくらでもあるんだけど、その本人たち(主人公だけでなく周囲の人々も含め)の切実さや儘ならなさにちゃんと向き合った脚本や演出になっていてそれがすごく良かったんですよ。

とにかく優しくて強くて一生懸命な女の子たちの話だった。

ところでなにかと引き合いに出されているイメージの「パンズ・ラビリンス」ですが、あちらを観た時には割と強めのダメージを受けたけど(思い出すのもつらいレベル)、こちらは大丈夫でした。万人におススメできる。特に女子たち、かつて子供だった人、孤独な嵐をくぐり抜けて生き延びたすべての人に。

あとこれはただ思っただけなんですが、カレンとバーバラ(主役の姉妹)ってすごく古風な感じの名前だけどなんか理由があるんだろうか。意味のある名前なのかな。その辺はよく分かんないですね。

さて。

一方では。

日本語の感想記事だとネガティブな評価ばっかり目につくのは(記事タイトル見て即閉じしてるから読んでないけど)なんでだろうね。恋愛対象の男子やカワイイ女の子が出てこないから?内向的な自分がバカにされた気がするから?でもこの映画、主役のバーバラ含め、不器用だったり、不運だったりして世界と和解できてない女の子たちにすごく優しい。観察者の視点からの価値観を押し付けたりしないし、最悪のいじめっ子でさえ断罪はしない。ネガティブな感想を書いた人たち、この映画に込められた祝福を受け取れないなんてかわいそうだな。自分の中の、孤独で内向的な子供を許してあげれてないんじゃないの。大丈夫?人生つらくない?(積極的に煽っていくスタイル)

とにかく!

よい映画なんですよ!!自分は全面的に擁護します!!!

よろしくね!!!!!

 

そういえば公式サイト(って出てくるページ)、乗っ取られて改変されてる気がするんですが、大丈夫でしょうか!!!誰か管理してあげてーーー!!!(なんか不遇な映画だな…)

では!!!