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映画「DAHUFA–守護者と謎の豆人間–」がとても良かったのでいろいろ調べた

※2021/11/02追記あり

みなさん、観ましたか「DAHUFA–守護者と謎の豆人間–」!!

鮮烈な奇想、乾いたバイオレンス、90年代アニメ的ユーモアとエロス、美しい背景美術に痺れるような決め台詞、こんなの絶対みんな好きじゃろ???(主語が大きい)

2021年は中国発のフルCG3Dアニメが取り上げられる機会が増えましたが、本作は、デフォルメの効いたキャラクターが美しい背景の中を飛び回る2Dアニメなので、日本ではむしろ馴染み深いタイプの作品だと思います。ハイファンタジーだから予備知識も不要だし、西遊記とか封神演義とかに親近感のある大人世代には大変おススメ。アクションや台詞回しは完全に大人向けで、個人的には、原作ナウシカの殺伐とした、それでいて情感豊かな雰囲気を思い出しました。

被抑圧者の存在を前提とする社会構造、搾取する/されるシステムが入れ子のように繋がって反転する不気味さ、閉塞に穴を穿つ圧倒的な暴力、トリックスターの存在感…。監督がインタビューで、アクションはタランティーノ作品を参考にした部分もある、って言ってたの、すごい腑に落ちた。なるほど!!よくぞこれをアニメで!いやアニメだからこそか?というような内容ですね!!

公開規模があまり大きくないのが残念ですが、近くでやってたらぜひ観て欲しい!配信とかあるか分からんからね…。むしろよく日本公開までこぎつけたよな。せめて円盤化してくれたら買うんで…いやそっちのほうがハードル高いのか???海外作品の権利関係は(いろんな話を聞くにつけ)難しそうですよね。

プロモーション用に公開されてるコンセプトアートみたいなやつの画集と、キャラクター紹介と、監督インタビューくらいつけてくれたら最高だけどな、円盤。出ませんかね。

中国では配信オンリーの映画製作も活発で、なかなか劇場公開まで行かない場合もあるみたいなんですが、本作を日本でも観れるような形で公開してくれて本当に良かったです。後で挙げる監督インタビューでは、劇場公開用に作り直すのに3年くらいかけたって言ってるぽい(翻訳が合ってれば)。マジでありがとうございます!!!

あとはとにかく中国語字幕か、できれば原語台詞の書き起こしが読みたい。主要登場キャラ何人か、かなり口数が多いので(その代わりに喋らないキャラは徹底的に喋らない)、中国語が分からないながらも、字幕だと文字数が厳しそうだな、というところが何か所かあったのと、おそらくですが古典からの引用が多そうなんですよね。そういう解説記事無いかなと思って調べてみたんですけど、言葉の壁が高くてそれっぽい記事に辿り着けなかったんだよな。まあ自分が中国語ができて教養があれば問題なかったんですけど…ヒアリングは難しいから…(ヒアリングだけの問題ではない)。

漢詩みたいな比喩表現と韻律が整った決め台詞みたいなのが、いろいろあったような気がするんですよねえ、分からんけど。有識者求む…。ちなみに、個人的に一番「は!?!?!」ってなったのは、羅丹(ロダン)(黒い三角の暗殺者)の最後のシーンの台詞ですね!!あれはなんだ!!なにも分からねえ!!!!

で、いろいろ調べているうちに辿り着いた記事で良かったやつをメモ代わりに置いておきます。中国語の監督インタビュー記事2本は、それぞれ掘り下げている内容が全然ちがうのでかなり読み応えがありました。各記事のリンクの下に、個人的に気になったポイントを箇条書きにしておきます。どの記事もそれなりにネタバレがあるので、全文読むのは自己責任でお願いしますね!翻訳はDeepL頼みなのであまり信用しないでください。最後にネタバレなしの日本語のインタビューも置いとくね。よろしくよろしく。

監督とプロデューサーのインタビュー(中国語):どのレビューも『大護法』のことを書いているように見えて、実は書き手自身のことを書いている(ふんわり翻訳)

独家对话导演不思凡:影评好像在写《大护法》,实际上都在写自己_详细解读_最新资讯_热点事件_36氪

  • 初手から「どうやって審査を通ったの?」とか聞かれてる…
    プロデューサーが作品に惚れ込んで劇場公開まで漕ぎつけたみたいなので、マジで感謝ですね!!!(監督はそれまで配信サービスの審査に落ちまくっていたので半信半疑だったぽいが)
  • 「豆人間」の原型は同僚が作った小さな人形
    ほう…。確かに、元が手作りの人形だと言われたら納得のいく造形ではある。ストップモーション・アニメになっても面白かったかもしれんね
  • 皇太子のイメージ(モデル?)は香港俳優の徐錦江(オタクっぽいイメージ、高貴さがない、俗物)
    そ、そうなん???中華圏の民???
  • (監督)タランティーノ作品の雰囲気はかなり好き。映画を作り上げていくときの、自由で慣習に囚われない奔放なところ
    上の方でも書いたけど、これは本当に納得した。中国にも武侠の伝統があるけど、本作のアクション、めちゃくちゃスタイリッシュでフレッシュなので(あと飛び道具をつかう)、なんだろうなこれは??と思いながら観ていた
  • 主役の「大護法」は寂しがり屋(孤独)なので、いつも友達の鳥(鳥?)を連れてお喋りをしている
    へえー!口数が多くて字幕が苦労している様子が伺えたよ…
  • 広東語バージョンを作ったのは、マーケットを広げたかったため。(プロデューサーが)幼いころから親しんだ香港の武侠映画のような雰囲気が出て(東北語、成都語、上海語よりも)上手くいったと思う
    インド映画界は主要言語ごとにマーケットが分かれている(各言語でスター俳優がいる)という話を聞いたことがあるが、中国でもそうなのか

監督のインタビュー(中国語):「DAHUFA」の世界観はこうしてデザインした・この美しく暴力的な作品はどうやって生まれたのか?(ふんわり翻訳)

《大护法》导演不思凡:我是这样设计《大护法》世界观的|界面新闻 · JMedia

  • ビジュアルの水墨画のような雰囲気はメインスタッフの得意なタッチからきている
    オープニングクレジットの水彩画みたいな画面がめちゃくちゃ美しくて、一気に作品世界に引き込まれるんですよねえ
  • 江湖(俗世間から離れた隠士が住まう世界、あるいは伝統的な武侠小説における、一般社会と隔絶した武術に秀でた特殊結社)のイメージは監督が意図したものではない
    なるほどなるほど。この質疑は、中国の一般的な観客がどういう風にこの作品を受け止めるのかの一端を示していますね
  • 豆人間の町を描くのにブラジルの貧民街が参考になった
    あの高低差のある街並み、アクションに縦のバリエーションができるので面白いなあと思いながら観ました。確かにテレビや映画で観たブラジルの貧民街はまさにそんな感じだったわ。なるほどねえー
  • 主役の「大護法」は物語ができあがってから最後に完成したキャラ
    そうなのか!幼いのか老成してるのか言動からは全然わからなくて、ユニークなデザインも相まって魅力的なキャラクターですよね!彼のタフネスが物語の牽引力になってる部分もあるし、口数が多い割に謎だらけの主人公というのが非常に興味深い。「江湖」的には喋りすぎらしいが…
  • アクションは西部劇やタランティーノ作品を参考にした
    西部劇!!確かに!!上の項で書いた主役像も含め、基本的にめちゃくちゃハードボイルドだからな…。あと、ライフル銃みたいな武器をつかう主人公と、二丁拳銃遣いの対決とか!!!
  • 物語を語る過程は、森の中を歩いて、今まで気づかなかった細部を見つけるようなもの
    だから監督の他の作品とのリンクやクロスオーバーがあるんだって。えー、観たいよーみせてみせてー
  • 三部作の予定!
    がんばって稼いでください!!!プロデューサー!!

監督のインタビュー(日本語)

超過激な暴力描写に熱狂的支持! 前代未聞の中国国産アニメ「DAHUFA」監督が語る制作秘話 : 映画ニュース - 映画.com

日本語なので元記事を読んであげてね…上ふたつのインタビューと比べると短いけど、ネタバレは無いし、監督の来歴にも少し触れてるよ。昔から漫画家になりたかったという話、ひとつ前の記事中の、初期イメージ絵を見ると納得です。

はい!ということで、監督とプロデューサーと配給会社とDeepLに最大級の感謝を込めて、本記事をお送りしました!ありがとう世界!!

あ、台詞の書き起こしまたはそういう方向での解説記事を見かけたら教えて頂けると泣いて喜びます(特にロダンの台詞)。

では!!!

2021/11/02追記!

有識者いらっしゃいましたありがとうございます!ヒアリングすごい…

DAHUFAのこともうちょっと語る|ふるがる

あとロダンの台詞の解説見つけました!!!DeepLで日本語→中国語変換、翻訳候補を片っ端から検索、という力業の方法を思いついたから…これが天啓…

电影《大护法》里那句「妈妈,天要下雨了」有什么含义? - 知乎

いやその設定はじめて聞いたけど??ていうね。なんか監督のインスタライブみたいなやつからの情報なんですけど(動画のリンクあり)、どっかに書き起こしありませんかね??文字情報だったら頑張って翻訳できるので!!!

追記終わり!