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今のところ映画の話をしています

2022年、映画館で鑑賞したインド映画を振り返る

師走だよーーー!!!そろそろ今年のまとめに入ろうかと思って!!!エライ!

ということで、まずはインド映画です!「囚人ディリ」「スーパー30 アーナンド先生の教室」「RRR」「人生は二度とない」「マスター 先生が来る!」の話をします!

いや~、今年はインド映画が豊作だった(自分比)。自分はインド映画については全くの初心者で、その奥深い世界の一端すら掴めていないだろうな、という自覚がありますが、それにしても充実していた。劇場で観たのは5本ですが、それぞれ系統の異なる多彩なエンタメで、非常に満足度が高かったです。観たときにはいろいろ考えたり調べたりしたんですけど、まあすでに忘れそうなので、ここにメモっておきたいと思います。特に役に立つ解説とかは無いです、すごかった~~って言ってるだけです。

インド映画、信頼できる有識者が色々と情報発信してくださっているのでありがたいですね!あと熱心なファンの方もたくさんいらっしゃって、楽しい界隈だな~と思います。

あ、極力ネタバレは避けるつもりです、が、ネタバレが致命傷になるような作品はそもそもないです、大丈夫です(?)!

1本目:「囚人ディリ」(公式サイト

ダイハードでシリアスで過剰でエモーショナルなサスペンス・アクション!

たぶん都会のほうでは2021年内に公開されてたんですよね?自分は2022年の新年早々に映画館で観ました……いや~すごかった……。メインビジュアルに大書きされている「その魂に手錠はかけられない。」にピンときた方にはおススメですよ!

一人vs多数の格闘アクション、トラック隊列のカーアクション、警察署での籠城戦、それぞれに工夫が凝らされていて映像的な見どころも多いんですが、それを全て一夜のドラマに盛り込んだのがやべーよね!そんな一晩ある??しかも全部を一人の屈強な謎の男が撃破していくとか、あります???

殆どのシーンが夜の撮影なので、ライティングに工夫が凝らされていて画面の力が強いのもいいし、ヘヴィでドラマチックな劇伴も好みだった。あと、時限付きサスペンスとしての脚本がちゃんとしていて、登場人物たちと一緒に、祈るように朝を待ちわびる気持ちを味わえます(まあ理由は人それぞれなんだけど)。

ヴィラン側の若手俳優がすごく印象的だったのですが、インドでめでたく賞を獲って飛躍されたようで何よりです。極悪な奴らがたくさん出てくるけど、最終的には敵味方の全員に愛着が湧いてしまう作劇も見事だった。

それから、観た後は確実にビリヤニパーティーを開催したくなります。大量のビリヤニをめちゃくちゃ美味しそうに食うから…ビリヤニ食べたい……。

サントラが気に入って、今年の前半は割とヘビロテしてたんですけど、1曲目のタイトルが「kill and destroy」なんですよ。期待を裏切らないね!!

 

2本目:「スーパー30 アーナンド先生の教室」(公式サイト

なんか途中で3回くらいぼろ泣きした。こういうの弱いんだわ。

世界最高峰の頭脳が集うインド工科大学への合格を目指す、無料の予備校を運営するアーナンド先生の半生を描いたほぼ実話!(ご本人談→ 優秀な若者30人を無償で教育、世界最難関大に全員合格!"奇跡の私塾"の誕生秘話(此花 わか) | FRaU )

教育マフィアからの襲撃が頻発するせいで、しばらくボディーガードを付けて生活していたりしたらしい(ソース見失った)。覚悟がすごい。

インド映画らしいダイナミックな展開や賑やかな映像表現も楽しいし、アーナンド先生の挫折、困難、信念、子供たちの貪欲さ、煌めく知性に胸打たれます。そんであのユニークでスパルタな教育方針ね!勉強をするのはより良い人間になるためである、という、先生の人生を賭けた確信が、この途方もないプロジェクトを推進し、道を拓き、熱い名言となって観客の心を揺さぶるのです。

主演のリティク・ローシャンは、ヒンディー語映画界では生まれながらのスター俳優ということで大人気らしいですが、もちろん自分は全然知りませんでした(無知)。本作ではスターの輝きは抑え気味とのことですが、まあ溢れるカリスマ性を隠し切れるわけもなく。

ものすごく印象的な瞳の色をされていて(透き通った金色に緑の縁取りがあるみたいな)、お顔がアップになるたびに釘付けだった。あんなの老若男女問わず誰でも恋に落ちると思う。

 

3本目:「RRR」(公式サイト

本年インド映画界最大の話題作!なんか話題沸騰し過ぎてもうここで改めて書くことはとくにありません…みんなの感想や考察や解説を読んでいたら満足してしまった。

……これで終わるのもアレなので、個人的におススメの副読本を挙げておきますね!タイミングよく読んでて良かった!という2冊(正確には4冊)です!それぞれラーマとビームが生きる世界を理解するのにぴったりだよ!たぶん!

「RRR」とほぼ同じ1920年代、イギリス統治下のインドを舞台にしたミステリーシリーズです(2022年末時点で邦訳は3冊)。インド帝国警察に赴任した英国人と現地採用新人警官の二人が主人公なので、警察組織への理解が深まりますね!殺人事件の謎を追う過程で、藩王国まで絡む複雑な政治情勢や交易都市として栄えたカルカッタの街並み、人々の暮らしが活写され、歴史小説としても読みごたえがあります。シリーズ完結まで邦訳されて欲しいので、みんな読んでね。

www.hayakawa-online.co.jp

  • 「史上最恐の人喰い虎-436人を殺害したベンガルトラと伝説のハンター-」デイン・ハッケルブリッジ

こちらもほぼ同時代のインド北部、20世紀初頭に人々を震撼させた一頭の虎と、植民地政策に翻弄された凄腕ハンターの邂逅を壮大なスケールで描くノンフィクションです。

インド亜大陸における”虎”の役割を文明以前から解き明かし、英国統治下での森林開発が、かの地の動植物にどのような影響を与え、人々の生活に何をもたらしたのかを迫真の筆致で綴る。そして浮かび上がる、”人喰い虎”はなぜ”人喰い”になったのか?という問いへの答え。また、誰もなし得なかった”虎退治”を成功させたハンターも、英国の植民地政策に翻弄された人生を送り、その途上での”虎”との対決はあまりにも運命的なのであった。

インド近代史や動物生態学に興味のある人、そして全ての本読みにおススメしたい一冊です。たぶん図書館にあるから読んでね。

www.seidosha.co.jp

 

4本目:「人生は二度とない」(公式サイト

インド発、スペイン行きの青春ロードムービー!さ、爽やか~~!!

2011年の映画ですが、今年公開が決まったのはリティク・ローシャンつながりかな?本作では、鍛え抜かれた肉体を惜しげもなく披露していますね!ザ・映画スター!って感じです!個性的な男子3人の掛け合いも楽しいし、ちょっと捻りのある展開や意外なラストも良かった。もちろん美しいスペインの自然や街並みも素晴らしく、やはりロードムービーというのは良いものですね!インドからのスペイン旅行者を激増させたというのも納得ですよ!

で、評判の良い(※未見です)ガリーボーイ」の監督だというのは観た後で知った。アマプラにあるじゃんと思って観ようとしたら”お住いの地域では…”て出てしょんぼりしました。

女性監督だからか、脇役の女性たちのキャラクターに奥行きがあったのも良かったです。それぞれに癖があって魅力的で、現代インド社会を生きるタフで美しい彼女たちを観ていたら、なんか元気になりました。

こちら、大変勉強になった解説(ネタバレあり)を置いておきますね。このサイト、初心者にはありがたい情報の宝庫で、読み切れませんよ…。

filmsaagar.com

 

5本目:「マスター 先生が来る!」(公式サイト

「囚人ディリ」みたいなノワールとインド伝統のスター映画の両方が観れてお得!みたいな作品であった。いや監督が同じとは知らずに観に行って、悪役の撮り方とかトラックの使い方が似てるな…流行ってるのか?とか思ってしまった。ごめんなさい。

二人のスターを擁した大作に相応しく、集団でのダンスや工夫の凝らされたアクション、アルティメットなカバディ(あんな物騒な競技ではなかった気がするが…)などが散りばめられた紛う方なき娯楽作ですが、直球の社会批判もあって、若い監督の志を感じた。「スーパー30」と同じくシビアな現実を、希望を持って、ド派手に語るまさに今が旬の映画です。最後にきっちり落とし前をつけるのも、清々しくていいなあ、と思いました。

本作の監督、「囚人ディリ」でもそうだったけど、登場人物一人ひとりを限られた時間で魅力的に撮るのが抜群に上手いので、アクションに限らず、パニックものとか青春ものの群像劇を撮ってみて欲しいですね。ていうか前半の学園ドラマで一本撮れるのではないか。

しかしインド映画界のスター達は、フィジカルが強いね!!そうでなきゃスターになれないのであろうが、この人たちマジでなんでもできるな…ってなりませんか。肉体そのものに説得力があり過ぎる。

本作のクライマックス、どっちがヴィランか分からないくらいイカツい二人の直接対決では、拳の重みで空間が歪んでるんじゃないかと思った、すごかった。なんかすごいアクションを観たかったら、インド映画は外せませんね…!!

はい!ということでインド映画感想まとめでした!!!楽しくて長くなっちゃった!

こういう良い作品たちを発掘して、全国ロードショーまで漕ぎつけてくださる関係者の皆さまには感謝の気持ちでいっぱいです!LOVE!

あと、どの作品もパンフレットが充実していてそれも良かったです。初心者向けの解説から、物語の周辺情報まで網羅されていて、インド映画の魅力を伝えたい、という気概を感じます。マジでありがたい。

ここ数年で、インドの観客層に映画を配信で観る習慣がついて、ハリウッド映画なんかと同じ土俵で比較されるようになってからインド映画全体のレベルが上がった、という話をどこかで読んだけど、そういうこともあるかもね~と思いました。でもそもそも市場が大きいから、トップレベルの作品の質が高いんだよね、たぶん。

そういや評判の良かった「グレート・インディアン・キッチン」は見逃したんだよな…まじで今年は豊作だったんだね。なんか仕入れの都合とかあるのだろうか。

あとは来年どこかで、これまた評判の良い「響け!情熱のムリダンガム」を観れたら言うことないですね。「エンドロールのつづき」も近所に来てくれたらいいのにな~!とか言っていたらリティク・ローシャンの「バンバン!」の公開が決まったようだ、わーい!!

来年も良いインド映画にたくさん出会えますように!!!

では!!!