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今のところ映画の話をしています

2022年、新作映画この邦題が良かったで賞 ※独断と偏見に基づく

はい、師走なのでどんどん振り返っていきますよ!!!走れ!!!

ここ数年で映画を(ただの趣味にしては)アホほど観たんですけど、その邦題すばらしいな!っていう作品がちょいちょいあるので、メモ代わりにまとめたいと思います!

今回のエントリー条件は以下の通りです。

(1)自分が鑑賞した作品

そりゃそうですね、観ないと中身が分からないからね。

(2)オリジナル邦題がつけられている作品

原題をそのまま訳したものは、それがどれだけ良くても採点対象外にしています(なぜならオリジナル邦題をつける意欲を称えるのが目的だから)。

(3)2022年に劇場公開されていた作品

これくらいに絞らないと選べないので、というただそれだけの理由。

 

ということで2022年に映画館で鑑賞した約120本の中から選びました!誰を称えてるのこれ!?配給会社の担当の人???映画業界のこと分かんないよ~~!

 

とっても素晴らしいオリジナル邦題ベスト5!(観た順、たぶん)

1本目・SING/シングネクストステージ(原題:Sing 2)

これ長めの感想を書いたのでそっちと同じこと言うだけなんですけど、前作から一回り成長した主人公たちが、まさにキャリアの”次のステージ”に進む話だったのでこの邦題はピッタリだな!と思ったのです。あと、このタイトルで”2”がついてなくても続編だということが分かるしね。本編も素晴らしかったがこの邦題をつけてくれたことにも感謝したいです、ありがとうございます!!

 

2本目・ただ悪より救いたまえ(原題:Deliver Us from Evil)

これ原題が新約聖書の「主の祈り」からの抜粋なんですよね。で、その邦訳に、かつての日本カトリック教会公式日本語訳、文語体のほうを持ってきた判断がすごいな!と思うわけです。別に本編で誰かが「主の祈り」を唱えるわけでもないし、日本ではそこまで人口に膾炙してないだろうに、原題を尊重しつつインパクトもあって、良い。何か意味のありそうななんとなくかっこいいフレーズとして読んでもいいし、罪を犯し続ける主人公たちが唱える真摯な祈りとして解釈してもいいし。良いですねえ!(2回目)

 

3本目・ゴヤの名画と優しい泥棒(原題:The Duke

原題は、盗まれた絵画のタイトルですね(ゴヤの「ウェリントン公爵」)。元になった実際の事件は特に英国ではかなり有名らしく(そりゃそう)、原題とメインビジュアルでおおよその粗筋が伝わるんだと思いますが、日本ではそうはいかないので、邦題をどうするかはそれなりに検討されたことと思います。知らんけど。で、本編はハートフル社会派コメディ、かつちょっとしたミステリー仕立てなので、その雰囲気がよく伝わる邦題だな!と思いました。かなり気に入った作品なので、短めの感想を上期のまとめに書いてます。けっこう気合の入った社会派映画の側面もあるので、もうちょっと硬派なイメージを打ち出しても良かったかなと思いつつ、それはないものねだりかな!

 

4本目・きっと地上には満天の星(原題:Topside)

原題は”上層”の意味ですね、物理的にも、階級的にも。ニューヨークの地下空間に暮らす母娘が、地上に出ざるを得ない状況に追い込まれ、そして…、という物語です。原作は1980年代が舞台で、おそらくジュリアーニ市長の浄化作戦を背景にしているんだと思いますが、映画では現代に変えてますね。で、生まれてから地上に出たことのない娘を連れて地下を出る母親が、娘に地上の話をする場面がいくつかあって、邦題の言葉はその中から取られています。確か。原作とも原題とも違う、情緒のあるタイトルだなあ!って感心しました。なお物語自体は、小さな救いはあるものの割とシビアな展開と結末なので、この邦題は観客側の勝手な、しかし切実な祈りの言葉でもあります。

 

5本目・秘密の森の、その向こう(原題:Petite maman

原題はネタバレなんだよなあ~!いやセリーヌ・シアマ監督がつけたタイトルなんだろうから、ネタバレではなくテーマなのだとは思うが(オープニングでばーん!って出るし)。物語の魔法を感じるこの邦題、映画の内容とも合ってて素晴らしいです!フランス映画、割ときっちり邦題がついてる印象がありますが、配給会社にそういう伝統があるのだろうか。

 

以上、素晴らしい邦題5本でした!!!!

ここから先、ちょっと……な邦題の話をするので、そういうの読みたくない方は自衛をお願いします。映画としては良いのになんだその邦題は、というパターンが多いです。この感じからすると、邦題のせいで見逃してる良作もあるのでは、という気がしていて、それでちょっと苦言を呈したい気持ちもある。

ではいきますよ。

 

その邦題はイマイチ…ていうか中身に負けないように頑張れ(観た順)

Tick, tick... BOOM! : チック、チック…ブーン!(原題:tick, tick...Boom!)

映画は素晴らしかったので長めの感想を書いたんですけど、それはそれとして邦題さあ…ってずっと思っていた。原題は、時限爆弾が爆発するときの擬音なので邦訳するなら”チック、タック、ドカーン!”だしそれではチャラ過ぎるというならなんか副題をつけろよ、と思いました。まあ原作ミュージカルがあるからそっちと揃えたいのかもしれないけど、映画の客層と欧米ミュージカルの客層、そんなに被ってないと思うが…??だいたい、原題+日本語、なのに情報量が1ミリも増えていないのでダメです。

 

潜水艦クルスクの生存者たち(原題:Kursk)

原題はシンプルに”クルスク”ですね。これは邦題に苦労したんじゃなかろうかと思います、それは分かる、が、もうちょっと頑張って工夫して欲しかった…本編を観た方なら同意頂けるのではないでしょうか……。これ実際の事件を映画化しているので、原題はその顛末を知ってる人に訴求したかったのかな、と思うのですが、日本ではそんなに知られていないはずなので、うーん、難しいねえ…。ただ、邦題で潜水艦の乗務員にフォーカスしたのは慧眼だと思います。惜しい。

 

シング・ア・ソング 笑顔を咲かす歌声(原題:Military Wives)

原題の通り、銃後の妻たちの話なんですよね、これ。なのになんでこんな没個性かつ無駄に長い邦題をつけたんだ。しかも”咲かす”て。文法が破綻していて気持ち悪い。”咲かせる”ではいかんのか。意味のない”シング・ア・ソング”を無くせば1文字くらい増やせるだろ。センスが悪すぎる。映画自体は、昭和の団地ミステリーで読んだようなごちゃごちゃした人間関係だけでなく、家族が戦場にいること、そういう負担を込みで銃後の社会を運営することの複雑さが垣間見れて興味深かったです。いやだからマジでこの邦題、なに??

 

炎のデス・ポリス(原題:Copshop)

原題はシンプルに”警察署”ですね。前にちょっとした感想を書いたので同じことを書きますが、けっこう真面目な(真面目な?)時限付き密室バトルロイヤルなので、こんなすべてをパワーで吹っ飛ばす!みたいな邦題はもったいないな、と思ったのですよ。人物描写は誠実だし、ちゃんとミステリーやってるし。むしろ伏線もフラグもあってないような「ブレット・トレイン」こそ”弾丸列車でレッツゴー!”みたいなタイトルでいいんではないか(それはどうか)。

 

続いては、ちょっとマジで反省して欲しい案件です。

邦題がぜんぜん良くない、ミスリードで鑑賞の足を引っ張るのやめて欲しい(観た順)

悪なき殺人(原題:Seules les betes)

原題は、英語だと”Only the animals”で、”動物だけが”、みたいな感じでしょうか。ちょっとした悪事や不運が連鎖して、人が殺されたりする、バタフライ効果の応用(?)っぽいミステリーです。登場人物が多く、時系列が錯綜したりするのでややこしいですが、間違いなく、悲劇の発端は悪意です。なのでこの邦題はシンプルに間違っている。だいたい本作において”殺人”は主要なドラマじゃないし…粗筋だけ読んで本編を観ずにタイトルつけただろ、という気がしますね。真相は知らん。ヨーロッパ映画らしい、静かなミステリーだけど後味が悪すぎて引いた。

 

マイ・ニューヨーク・ダイアリー(原題:My Salinger Year)

原題から分かる通り、作家サリンジャーが重要な映画なのでそのファン層を呼べない邦題は本当にダメ。日本だとあまり馴染みのない作家エージェントの仕事内容も興味深いし、サリンジャーのファンには有名なとあるエピソードの裏話なので、英米文学に興味のある層にリーチしないとダメだろ、なんでこんな変な没個性的なカタカナタイトルにしたの??もしかして配給会社の担当者がサリンジャーを知らなかったから、みんなも知らないと思った???村上春樹つながりで知ってる人も多いと思うよ???せめて副題を”サリンジャーとの日々”とかにした方が良かったのではなかろうか。

 

不都合な理想の夫婦(原題:The Nest)

原題は、直訳だと”巣”だけどまあ家庭とか家のメタファーですよね。そのまま。で、この邦題、まず日本語として破綻してて本当に気持ち悪い。キャッチコピーとかで文法がダメなのは(意図がはっきりしていれば)気にならないんだけど、この邦題はちょっと意味が分からない。あと、夫婦の話ではなく家族の話なので(原題の通り)、映画の内容に対してミスリードになっている。これも予告だけ観て突貫で邦題をつけたんではないか、という疑惑が拭えない。知らんけど。映画としては、撮影が凝ってるし、ジュード・ロウを始め俳優の演技が良かったので、この意味不明かつ間違った邦題に余計に腹が立つ。なんだよこれ。

はい、以上、2022年新作映画オリジナル邦題を考察する会でした!!ご清聴ありがとうございました!せっかく邦題をつけるなら、やっぱ中身に相応しいちゃんとしたやつにしてほしいよな!としみじみ思いますね。しょうもない邦題で観客を逃すの、誰も得してないからね!頼むよ!!!

番外編

邦題のパターンとして、原題+副題 のパターンがあると思うんですけど、その中でも後半をオリジナル邦題にして、本編のニュアンスを補足しようとがんばってるやつを集めてみました。集めただけ。

原題+オリジナル副題でがんばってるやつ(ほぼ観た順)

 ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男
 オペレーション・ミンスミート ナチを欺いた死体
 ブラックボックス:音声分析捜査
 クレッシェンド 音楽の架け橋
 ストレイ 犬が見た世界
 アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド (独語原題:Ich bin dein Mensch)
 モガディシュ 脱出までの14日間
 ワン・セカンド 永遠の24フレーム
 スーパー30 アーナンド先生の教室
 人質 韓国トップスター誘拐事件
 マスター 先生が来る!
 スペンサー ダイアナの決意
 MEN 同じ顔の男たち

邦題を考える人の苦労のあとが偲ばれますね…(?)。でもどれもいい作品でしたよ、頑張って中身を伝えたい、という意欲が湧くのも分かるよ。おかげで次に観る映画を選ぶときの参考になります、ありがとうございます!

その他、邦題に関して気になっていること

それはともかく(それはともかく?)間に挟む記号がわかりにくいんじゃい、ということを声を大にして言いたいわけです。スラッシュ、コロン、ダッシュ、スペース、それらは半角なのか全角なのか?サイトによって表記ゆれがあるのはデータベースの都合なのか?波線(~ ←これ)があったり無かったりするのは何なのか。

いやいまどき、曖昧検索で引っかかるから実用上は困らないんだけどさあ…、どういうルールで運用されてるのかが気になっております(真面目に調べたわけではない)。なんか分かったら追記するかもしれません。

ということで、オリジナル邦題を愛でる会でした!今度こそ〆ます!!ご参集ありがとうございました!!!

では~!!!