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映画「ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒」を鑑賞してぐうの音も出ない

スタジオLAIKAを世界遺産にしよう!!!

(たわ言)(たわ言ではない)

なぜこれを??実写で???やろうと???どゆこと??でお馴染みのスタジオLAIKA最新作、「ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒」をようやく観たのですが、信じられないくらい良かったのでその熱狂冷めやらぬままに「コララインとボタンの魔女」「ボックストロール」「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」を改めて配信で観ました!!ワーッ!

でその結果、「ミッシング・リンク」の超絶技巧に改めて驚嘆し、それはそれとして、作り手の"より良いものを世界に残そう"という一貫した姿勢に感銘を受け、スタジオLAIKAマジで推せるな(今さら極東の島国の片隅から推されても、とかいうのはさておき)と思ったので冒頭の発言になりました。いやこれまで全作品アカデミー賞ノミネートですからね、とっくにちゃんと評価されてるんですけどね、まあでも語りたいよね!語らせろ!!!という気持ちのままに書き綴ります。

致命的なネタバレはしてないつもりだけど、まだ観てないならこんな文章読む前にぜったい観てよね!約束だよ!

 

・超絶技巧の実写化(実写化??)その1・キャラクター、小物類

とにかくキャラクターデザインが秀逸~~!本作では何といってもおじさんが主役なので、絵面が地味だな?その隣の茶色いもじゃもじゃしたやつはなんだ?みたいなメインビジュアルですが(失礼)、動くとすごい魅力的なんだな、これが。主役のライオネル・フロスト卿はタイトル通り英国紳士なので、ひとつひとつの所作は優雅でありながら、冒険家らしい大胆なアクションを披露してくれるし、茶色いもじゃもじゃは野性味あふれる大振りな動作と繊細な表情の演技が見もの。表情については3Dプリンタの普及などの恩恵を大いに受けたみたいですね。

あとそのほかの人間たちも大変キャラが立ってて、デザインと演技と演出のセンスがすごいな??ってなるんですが(特にライティング)、とりわけ印象に残るのは、冒険を彩る様々な動物たちです。海鳥や象の表情が絶妙にデフォルメされてて変だけどカワイイ~!!「コラライン」の黒猫や、ボックストロールたちみたいな、愛嬌があってちょっと表情の読めない、不思議な顔。今思えば、「KUBO」はかなり写実寄りだったんですね。

小物類はまあ言わずもがなですね。小さい旅行鞄、食器、地図、ツイードのジャケットの愛おしさよ。それ触らせて!!できればちょうだい!!てなるね。ツイードの生地に落ちる繊細な影なんかに、実写の威力を感じますね。

あとですね、食べものが旨そうなんですよ。「KUBO」で出てきた鱒(たぶん)のお造りには日本中が嫉妬しましたが、「ミッシング・リンク」で出てきた食べものは、美味しくなさそうなのに美味しそうというアクロバティックな進化を遂げていました。そうです、あの後半の食事シーンです。得体のしれない謎のスープも、メンバー内の一人だけバリバリ食べている謎の焼き菓子(?)も、造形がリアルであるがゆえに"ヤバい食べもの"オーラがすごいんですが、食べる動作の豊饒な演出のおかげで、もしかしてめちゃくちゃ美味しいのでは...??みたいな気持ちになる。すごい。もちろんオープニングの、寒い野外で飲む熱い紅茶は最高だよね!というやつも正攻法に素晴らしいです。はい。

・超絶技巧の実写化その2・背景セット

実写だけあって、上下移動を伴うアクション(登ったり落ちたり)のリアリティ、というか重力の実在感(重力の実在感??)が素晴らしい。もちろん丁寧な演出のたまものではありますが。それでそのダイナミックな人形の動きとそれを捉えるカメラワークを実現するための巨大セットですよ。中盤の揺れる船のなかでのわくわくするアクションは、実際に回転する船内セットを作ってその中で人形を動かしたらしい!!最高だ!!!森の中を象に乗って進むシーンは、早くからメイキングが公開されて話題になっていました。20秒のシーンに3か月かけたっていうアレ。どうやって撮ってるのかは分からないけど素晴らしいシーンであることは分かる。希望と友愛が先行きを優しく照らす、輝くばかりに美しいシーンでした。メイキングだけ見せられて本編がお預けになっていたときの気持ちを10文字以内で述べよ。「早く本編を見せろ!!」

違う違う、本題はですね、遠景のワイドショットがこれまで以上に多用されていることに衝撃を受けた話なんですよ。ストップ・モーション・アニメで遠景を撮ろうとすると、小さい人形と巨大セットが必要になるわけですが、近景と遠景を自在に行き来しようと思うと、色々な大きさの人形と背景セットがそれぞれ必要になりますね。それを全て製作し、シーンごとに大きさの異なるセットを使い分け...正気か?!?!(褒めてる)

本作のように世界中を旅する話はストップ・モーション・アニメにとっては非常に挑戦的な題材のはずなんですが(セットがめちゃくちゃたくさん必要だから)、見事な出来栄えにただただ感嘆するばかりです。

LAIKAでは、物語が先にあって、それをどうやったら実現できるかをみんなで考える、という話をどこかで読みましたが、それにしても一作毎にすごい進化を遂げている。

ラスト近くで氷と雪の中でのすごいアクションシーンがあるんですが、氷の質感もさることながら、変幻自在のカメラワークに圧倒されます。それこそ3Dアニメじゃないとできないような。でもそれを実写でやってしまうという、圧巻のクライマックスでした。

・世界がぐるりと反転する感覚、悪夢と現実の境目、行きて帰りし物語

あまりの超絶技巧なのでストップモーションアニメの話を先に書いてしまったけど、そもそもLAIKAの作品はどれも絵力(えぢから)と物語力(ものがたりりょく)がめちゃくちゃ強くて、初見だとストップ・モーション・アニメとか演出の技術にまったく思いが至らないんですよね。登場人物たちの冒険に手に汗握っていてそれどころじゃないので。ということで「ミッシング・リンク」もとりあえず2回見た。いや~~すばらしいですね~~~~~!!!!2回目でも存分にドキドキしながら観たけどね!!

それでですね、LAIKAの作品群をまとめて観ると、見出しで書いた、見えてる世界がぐるっと反転するような、物語に没頭している観客ごと揺さぶるような展開が必ずあることが分かります。パーソナルな悪夢的世界観がキュートな「コラライン」や「ボックストロール」ではそれがすごく分かりやすく描かれていたけど、「KUBO」や本作でも基本は同じっぽい。眼前に見ているのは誰かの悪夢なのか、自分が本当に求めるものは何なのか、真実はどこにあるのか、それらを一気にひっくり返すポイントオブノーリターンがあって、そこに至るストーリー展開や演出がマジで面白い。絶対、おお!てなる。

この感覚は、本質的には、ストップ・モーション・アニメのメイキングを観たときの何とも言えない感情に近い気がしています。ただの楽屋落ちと違うのは、そこに込められた膨大な労力と愛ですよ。ひとコマひとコマに費やされた技術と意思を思うと毎秒ごとに褒めたたえて抱きしめたくなるんですが(何を)、それが登場人物たちの一筋縄ではいかない冒険譚と重なってもう涙腺が決壊せざるを得ない。

あと本作は、主人公たちの"自分探し”の鉄板であるところの行きて帰りし物語なんですが、前作「KUBO」で家族をテーマにしていて、家族で始まって家族で終わる物語になっていたのが、そこからさらに踏み込んで、どこに帰るのか、傍に誰がいるのか、ということをアップデートしていたのが、おじさんを主役に据えた意義も感じられてとても良かったです。

・ところで致命的な誤訳が。

あったようですね、字幕に。1回目観たときにあれ??と思ったんですが、有識者のみなさまによるとやはり誤訳らしい。配信&ディスク化のときには直るのかしら...。

 

さてすでに三千字を超え、まだまだ書けそうな気がするけどもうよかろう。推してるのは充分伝わったよね、パトラッシュ。うんうん、長い話を聞いてくれてありがとうね。なんせ友だちがいないからさ。

...。

では!