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今のところ映画の話をしています

映画「ゴールデン・リバー」を観て新年早々リズ・アーメッド祭りです

※本稿では「ナイトクローラー」「ヴェノム」「サウンド・オブ・メタル 〜聞こえるということ〜」「ゴールデン・リバー」の話をするよ!ネタバレは…最低限は気にするけど…旧作はもういいかな、って思ってる人がただただリズ・アーメッドは良いよね、というだけのことを長々と書いてるよ!

去年の振り返りで言及するの忘れてた…リズ・アーメッド…ごめん………

ということを、3が日に鑑賞した「ゴールデン・リバー」で思い出したので新年の初投稿にしたいと思います。ごめんってば(誰に謝ってんの???)。

リズ・アーメッド、2021年に入ったくらいから「サウンド・オブ・メタル」の評判をちらほら耳にしていて、メインビジュアルも印象的だし、でも配信限定だし(当時はアマプラに入ってなかったのです。そのあと何かを注文したついでに入会したけど最近また退会したんですよね、年末年始の録画を消化せねばならんのじゃ)、観る機会が無いな~と思いながらも頭の片隅にずっとあったのですね。で「ナイトクローラー」を観たときに、この印象的な青年は誰だ??ってなって調べてようやく、リズ・アーメッド!!!となったのは2021年も後半に差し掛かった頃でした(説明が長いよ)。

一度見たら忘れ難い印象を残す大きな瞳や長い睫毛、物憂げな視線が問いかける根源的な謎、はにかんだような繊細な笑みなど、画面の中で唯一無二の存在感を放って、共演のやたらと元気いっぱいなジェイク・ギレンホール(ジレンホール?)とがっちり組み合っていて、この天性と実力からすれば、スターダムを駆け上がるのも必然だったと言えるでしょう。

…とか思ってたのに「ヴェノム」ではあれー??この人観たことあるな??ってなったから本当にごめん、リズ・アーメッド。なんかああいう感じの(単純な)キャラクターを演じてるとは思わなくて不意を突かれたのでね(言い訳)。だから演技もあんまり覚えてないんだよなあ~~なんかびっくりしてるうちに変身してしまい…。というかあんまりああいう野心的なタイプのマッドサイエンティストの雰囲気じゃないよね??どっちかというと、地球を守るために人類を半分にしようとか言い出すタイプのほうだよね??なんかちょっとリズ・アーメッドがもったいないけど、こういう大作のヴィランに抜擢されるというのは、ちゃんと注目されてそれに応える力量があると評価されてるんだな~と思いました。

で、リズ・アーメッドムスリム俳優の地位向上、機会獲得に向けて積極的に活動している、というニュースを思い出して(↓これとか)

Riz Ahmed-Backed Study on Muslims in Movies Tells a Troubling Tale | IndieWire

微妙に居心地の悪そうな、おさまりの悪い感じはそのあたりから来ているのかな…とか考えていました。考えただけ。

そうこうして(?)、他の映画を観たりしているうちに「サウンド・オブ・メタル」の劇場公開が決まり、やったー!映画館で観たほうがよさそうなやつを映画館で観れるぞー!ってなって近くの映画館で上映するのを待ち、満を持して鑑賞できたのでした!良かったね!ありがとう配給と映画館のひと!

いやこれは本当に映画館で観て良かったです。自宅の貧弱な環境で観たらたぶん演出意図を半分くらいしか汲み取れなかったと思う。音の演出がとても繊細で、リズ・アーメッド演じる主人公が聴力を失っていく過程や、聴力の差異で生じる疎外感、新しい世界の獲得、過去との別れ、この映画が描く聴覚障害の様々な世界を、役者の演技と密接に結びついた音の演出で見事に表現していた。私自身は平均的な聴力を持っているので、正確さとかは評価できませんが。でも聴力を持つ我々が、聴力を失うこと/持っていないことをこんなにも身に迫って追体験できる映像作品は稀有なのではないかと思います。学校のエピソードとか素晴らしかったですね…リズ・アーメッド自身の優しい感じ、世界と向き合う際の柔らかな手つき、そういう美点が最大限に活かされていた。

ただ昨年のベストテンに入れなかったのには理由があって、全くの個人的な好みですが(そりゃそうだ)、主人公が社会的/精神的に孤立していることへのアンサーが無かったのがかなりキツくて…。映画の中で彼が下す色々な決断は、(繊細な演技と演出のおかげで)その切実さは十分に理解できるけど、ずっと独り善がりなのですよね…周囲に対して非常に”閉じて”いて、強靭な魂の持ち主ではあるんだけど、あまりにも孤独で、それ自体の良し悪しを言うつもりは無いんだけど、差し伸べられた手を全部振り払って、君はどうするつもりなんだい…?っていうのが観ていて切なかったので、ベストテンには入れることができませんでした。唯一、心を開いていたガールフレンドとの絆である音楽を失って、それ故に世界との繋がりもか細く途切れがちになって、ではラストシーンはそれに対する希望(または救済)なのか?と考えるとよく分からなくてですね。ちょっと私の人生経験では難しかったかもしれん。でもいい映画なのは間違いないです。納得の高評価です。

で。

年も改まって、そういや観てなかったなと思って観始めた「ゴールデン・リバー」に、リズ・アーメッドがなかなか印象的な役で出てきて不意を衝かれたりしつつ、なるほどな~ってなった(?)のでした。ようやく本稿のタイトル回収できた。長いよ(2回目)。

いや~、「ゴールデン・リバー」のリズ・アーメッドも良かったですね~~。リズ・アーメッドじゃなかったら登場即退場してたと思うな…(?)主人公が殺し屋な時点でお察しくださいだけど、あんだけ殺伐とした世界であんな理想主義的なことを言ってたら、殺し屋兄弟より多少は分別のありそうなジェイク・ギレンホールにも速攻でやられてしまうのではなかろうか。うさんくさすぎて。リズ・アーメッドのあの印象的な瞳と穏やかな口調で語られるからこそ意味のある話に聞こえるわけで、だからリズ・アーメッド、すごく良いキャスティングだったな、と最後まで観終わってすごい腑に落ちました。

ところで西部劇って、本質的にはロードムービーなんだろうか。まあ西部劇あんまり観たことないですけど…今のところ、誰かが誰かを(または何かを)追いかけて、途中でそれが逆転したりしつつ行きついた先で何かを選択する、っていうパターンが多い(ていうか全て)な気がしますね。西部劇で一括りにしちゃったけど、時代に応じて色々な交通手段が出てくるのがいいですよね。ロードムービーの醍醐味でもある。

「ゴールデン・リバー」も(どこまで原作準拠してるのか知らないけど)その形式をしっかり踏襲していて、二人組が二人組を追いかける展開になって、旅を続けるうちに不可逆的に変化していくそれぞれの相棒との関係性、追う/追われる立場の反転、旅の途上だからこその喜びや痛み、4人の邂逅によって生じる奇跡のような瞬間、いつか必ず訪れる旅の終わり、旅路の中で出会う様々なシーンが鮮烈に、忘れ得ぬ思い出のように描き出されていくのです。

強烈な"動"の個性を放つ殺し屋兄弟に、リズ・アーメッド演じる静かな、しかし狂信的なまでの信念を以て対峙するキャラクターの存在感が格別でしたね!いや凄腕なのに裏稼業に馴染み切れないジョン・C・ライリーも、頭の先まで酒浸りで暴力的で刹那的なホアキン・フェニックスもすごかったですけどね…隅々まで行き届いた演技、仕草のひとつひとつが圧巻だった。メインキャスト4人の中でいちばん俳優としてキャリアの浅いリズ・アーメッドが、彼らと渡り合うのは大変だっただろうな、と思います。でもあの四人組に、暖かな、それでいて清冽なフレッシュさを付け加えていて良かったですよね~!

はい!

ということで、リズ・アーメッドについて書いとかなくちゃ、と思ったことを書きました!

しかしこうして振り返ってみると、めちゃくちゃ着実にキャリア積んでるな…すごい聡明な人なんだろうなという気がしますね。応援し甲斐があるわ~~~。なんかこの少年のような甘さと頑なさを残したまま老成した感じになって、いろんな役柄を演じてみて欲しいですね。

いやマジで去年のうちに作品に出会えて良かったです。今後がますます楽しみな俳優の一人なのは間違いない!!!

極東の島国の片隅から応援してますね!!!

では!!