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映画「tick, tick...BOOM! :チック、チック…ブーン!」を観て序盤から号泣せざるを得ない

初見のオープニングシーケンスで泣いたの、「SING/シング」以来だったな…(呆然)。「30/90」ていう本作のオープニングテーマ、観た人ならご存知と思いますが、泣くような曲ではないんだけどな…(サントラを聴いて思い出し泣きしながら)。

……。

はい!

ということで、都会に遅れること約2か月、「tick, tick...BOOM! チック、チック…ブーン!」を映画館で(←重要)観ました!!!!やったね!!!!

早逝したミュージカル作家、ジョナサン・ラーソンの自伝的作品の映画化、ということでネタバレも何もないとは思いますが、未見の人はこっから先、気を付けてね!!

たぶん中盤の「Why」では全員号泣すると思うんで(ここの演出も歌も素晴らしかった)、観てない人は観てねとしか言いようがないんですけど。なのでいきなり泣かされたオープニングの「30/90」の話をするんですけど。これ、わたしが「SING/シング」で最初に泣いたのがロジータが家事の合間に歌う「Firework」なんですけど、思えばあれと同じなんですよ!テーマが!!!たぶんね!!

「30/90」、物語の幕開けに相応しいアッパーなメロディと独創的な歌詞で構成された曲そのものや、歌唱の表現力のすばらしさで、まずジョナサンの圧倒的な才能を見せつけられるんですよね。明らかに才能があって、そして本人もそれを多少なりとも自覚しているのに、周囲の人間からそれに見合う評価を得られなくて、それが全てじゃないと自分で自分に言い聞かせているのに本心ではぜんぜん納得できてないことも分かっていて、そういう焦燥と鬱屈の中で実生活を回して、っていうのがね、刺さりまくって致命傷なのよ。

その才能を試すことへの喜びと恐れ。飛躍への期待と失望の予感。諦めの兆しを振り払うかのような陽気さ。全てがあまりにも切実で胸に迫る。もうちょっと現実的に、器用に生きる手段もあるだろうしそれを選んでしまいたい自分もいて(SINGのロジータはそちら側からの出発でしたけど)、でも自分への期待を諦めきれない、青臭い焦燥が眩しくて切ないのですよね。

30歳までに認められなきゃ、とか、あの巨匠は〇〇歳でこれをつくったのに、とか、そんな焦りはその才能を知ってる周囲の人間や観客からするとほとんど滑稽な思い込みなんだけど、でもこの物語に出てくるジョナサンたちのその後の運命を知ると、その切迫感は”本物”になってしまうので、泣き笑いみたいな気持ちになる。

創作者や、どこかのフィールドで今まさに自分の力を試している人、才能を試す勇気が無くて機会を逃した人、ままならない日々の中で諦念と戦っている人、そういう人たちの心のどこかにこの「30/90」を歌うジョナサンが居るはずで、そうやって真っ直ぐに心の真ん中を狙い撃ちするような曲ってすごいなあと思うのです。

あとはあれです、アンドリュー・ガーフィールドくん、素晴らしかったわね!?!?ということです。ゴールデングローブ賞主演男優賞受賞、おめでとうございます!!!なんか「ソーシャル・ネットワーク」と「アメイジングスパイダーマン」のイメージしか無くて、(いまWiki眺めてたらロバート・パティンソンとお友だちっていう情報が出てきて頭が混乱しているよ、いや別に誰と友だちでもいいんだけど、)本人のキャラクターを役柄に活かすのが上手いのかな、って思ってたんですけど、今回の主人公はそれの進化形って感じでしたね!!!

ていうか舞台で賞を獲ったりしてたのか、なるほどそりゃ上手いわけだよ~。本作、ちょっと凝った構成の映画で、主役のジョナサンは色んなレイヤーが重なってるような複層的なキャラクターになってるんですけど、そのレイヤーを行き来するような演技がすごく演劇的で、でも映画としてのリアリティもきちんと成立するような絶妙なバランスになっていて、上手いなあと思いました。個人的にもそういうの大好きなのでね!!

歌もね、自伝的作品というだけあって、メロディはキャッチ―なんだけど歌詞がすごく内省的で、それをまるで親しい人に語りかけるみたいに歌うんだよな、くるくる変化する表情と合わせてベリーキュートでしたよ。かなり長めのソロ曲を演じきっていたのはもはや貫禄さえ感じさせて、心を奪われましたね。

映画全体で気に入ったところは、ミュージカル的仕掛け(ダイナーでの朝ごはんソング「Sunday」の演出とか)と映画的演出(プールで五線譜が浮かぶシーンとか)が両方しっかり楽しめるところです!リン=マニュエル・ミランダ監督は映画の監督は初めてらしいですが、ミュージカルで培ったであろう自身の強みをよく理解してしっかり利用していて、手練れだな!と思いました。

あと俳優陣について、ミュージカル中心で活動しているメンバーが多くて、監督とのコミュニケーションが円滑だったのか、映画全体がとてもリラックスした雰囲気になっていて、このパーソナルなテーマを扱う作品に良く合っていた。

この映画、ジョナサンの人柄とか、彼を取り巻く堅牢で暖かな友情がすごい印象的なんですが、それは同じミュージカル作家として監督から見たジョナサン・ラーソンの姿そのものなんだろうな、ということも全編から伝わってきて、愛が深くてそれも泣けるんですよ。最高の創作物を通して表明される創作者同士の連帯…エモい…(安直な感想)。

誰にでもいつか必ず訪れる人生の選択と別れを、これ以上ないくらいドラマティックな生涯を生きた若者の生き様を通じて描く、普遍的な青春の物語でもあります。マジで最高だった。ありがとうありがとう。

いや~1月は年ベス級の新作が立て続けに来て大変だったな…(都会とは公開時期がずれているのでね!!)今後も楽しみな作品が控えていて、シーンから目が離せませんね!!!

では!!!