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2023年、映画館で観た旧作映画の話

まだ2023年の話をしてるんですか???はい……

映画館で観る旧作映画、いいですよね!にわか映画ファンなので、「これは観とけよ!」みたいな感じでありがたいです。まあ「午前10時の映画祭」という歴史の長いイベントもありますが、あんまり近場でやってないのと、タイミングが合わないんだよね…。

やっぱり時間の流れに耐えて評価されている作品というのはそれぞれに見応えのあるものばかりで、映画館で観る、という鑑賞体験も含めて良い経験になりました。ということで、感想というかメモです。

■今さら観てないとは言えないシリーズ(※個人の見解です

ラストエンペラー
戦場のメリークリスマス
さらば、わが愛 覇王別姫

観たことなかったんですか!?そうだよ!!!

三作とも、映画館がめちゃ混んでてビビりました、若い人と年季の入ったシネフィルが半々くらいだったかな(確かどれも土日に観た)。中高年2~3人組のマナーの悪さも際立っていたな…なんか20歳前後の若い人たち、たぶん特にこういう特集上映をやっている独立系映画館に来る人たち、めちゃくちゃ静かに観ててびっくりするよね。上映開始前は売店などで楽しそうにしているが、始まってからは存在を忘れるほど静か…。それに引き換え、中高年の我慢の利かなさときたらもう、ここはお前の家か?っていうね。若い人はもうちょっとリラックスしてもええんやで、ですが中高年シネフィルには、お前は何度目かの鑑賞かもしれないがこっちは初見だぞ、です。めちゃくちゃ遅れて喋りながら入って来る、興味ないシーンでスマホ見る、エンドロールでスマホ見ながら喋り出す……、ええ加減にせえよ。そんなんだからシネフィルはライト層に嫌われるんだよ(知らんけど)。

閑話休題

ラストエンペラー戦場のメリークリスマス、映画界に坂本龍一の名を知らしめた2本が奇しくも2023年に劇場公開されてたんですねえ…R.I.P. たまたま、2本とも訃報を聞く前に観ていて、すごく現役っぽい印象が残っていたので、ニュースを目にした時には本当にびっくりしました。2023年は『怪物』もあったしね(感想はこちら。褒めてない)。

先日、機会があって坂本龍一氏の現代音楽…というかメロディの無いタイプの純粋音楽を解説付きで鑑賞したんですけど、そういうこともできる人が作り出すリリカルなメロディがたまらんな、という感想でした…(自分、音楽の素養が無いので)。(ところで今、坂本龍一のドキュメンタリーRyuichi Sakamoto: CODA』を観ながらこの文章を書いていますが、映画製作の現場がめちゃくちゃで震えるぜ…)

ラストエンペラーはすごく溥儀に同情的だな、と感じたんですけど(そりゃそうだろ、とは思いつつ)どういう文脈で理解すればいいのか迷ったな。史実からの改変部分の意図とか。しかしとんでもないリソースのパワーを見せつけられて大満足です。アカデミー賞を席巻したのも納得だよ。そしてこういう欧米資本との合作映画はしばらく(もしかしたら二度と)作られないかもしれないね。そういう意味でも、何かとんでもないものを見せられている、という感覚がずっと続く作品でした!

さらば、わが愛 覇王別姫はね~、これは好きなやつでしたね!激動の近現代史とそれに翻弄されつつもしぶとく生き抜く人間の群像劇、媒体を問わず大好きなので…。隅々まで監督の美意識に貫かれた美しく力強い画面の中で、己の運命を生きる人々。どうしても手放せない愛。壊れて失われたものは二度と戻らず、すべては流転し、最後に残るのはただ自分の命だけ…。レスリー・チャンについてはのちほど!

■久々に観て面白かったシリーズ

氷の微笑
バッファロー'66』

両方とも年齢制限ぎりぎりの高校生くらいのときに観てるんですが、やっぱ子供には難しかったようだな!!再鑑賞により名作たる所以が分かった気がする!これが大人の階段!!

氷の微笑は、あの超エロい着替えシーンは鮮烈に覚えていたが、他はなんか普通のサスペンス…?みたいな印象だったんですが(子供だからね!)、改めて観ると、こういうストーリーでヒロイン(?)の女性を理解を絶する怪物みたいなキャラクターにせずに、むしろ美しくて強くて一途な可愛い女と思える余地を残すの、すごい面白いし今でも新鮮だよね!?ポール・ヴァーホーヴェン監督の最新作『ベネデッタ』がたいそう痛快で楽しかったので、ではせっかくなので観に行くか…、て行ったので大満足です!あとサスペンスの撮り方が上手い、ぜんぜん普通ではない。

それとちょっと思ったのが、パク・チャヌク監督の『別れる決心』の海のイメージって監督が言ってる以上に本作の影響を受けてる気がするな、ということです。大衆が共有するイメージを利用してる、ってことなんだろうけど。

バッファロー'66』は、初見では「なんじゃこりゃ…」ていう感想だったんですが(子供だから!)、大人になったいま観ると、ままならない人生の苦さと、奇跡みたいな出会いのきらめきがハートに沁みますね…。まあ主人公はそこそこクズだと思うがな!ヴィンセント・ギャロのその後の歩みを思うと余計そう感じてしまう。あと食卓シーンがあまりにも小津映画構図(だよね?)。ラスト近くのフラッシュフォワード演出も面白かったけど、あれは明確な先行作品とかがあるんだろうか。いまの映画やドラマでも時々みかけるよね。

ところでヒロインのレイラ、もしかしてストリップダンサー(またはその見習い)なのではないかと思ったんですけど、どうでしょう。解説とかでもレイラの背景に触れてるのあんまり無いから分かんないけど。

■邦画!初見だよ!

スワロウテイル
『我が人生最悪の時』
『遥かな時代の階段を』
『罠 THE TRAP』
『鉄男』
東京ゴッドファーザーズ

未見の岩井俊二監督作品、うっかり好きになるかも…などと恐れおののきながら観に行ったスワロウテイル、いやあ~思春期で観てなくてよかった!!あぶなかった!!!こんなの……こんなの十代前半で出会っていたら、狼朗(演:渡部篤郎)にスっ転んだ挙句、その後に出会う創作キャラの全てに狼朗の影を追う羽目になっていたと思うわ!あと人によっては劉梁魁(演:江口洋介)に転がり落ちると思います、友人と袂を分かつ事態に発展したかもしれない(そんなに?)。”円都”の設定とそれを支える美術仕事が素晴らしく好みだった、ていうかこんなのみんな好きじゃろ!?!?

あと岩井俊二作品では、基本的に女の子たちの願いはみんな叶うんだよね。そこが一番のファンタジーで、好きなところ。

で、濱マイク3部作!これもねえ~~うっかりマイクのチンピラ風ブランドファッションにかぶれかねない時期に観てたら危なかったね!!!まあ自分に着道楽の人生があったかもしれないと思うとちょっと惜しいが…。いやあれは永瀬正敏の品の良さあってこそのお洒落なのであって、一般人が迂闊に真似をすると大怪我のもとである。

たぶん林海象監督の作品を初めて観たのですが、3作とも観客の安易な消費を許さない、挑発的な作品で面白かったです!特に3作目『罠 THE TRAP』は、前二作で作り上げた作品世界を自ら叩き壊すようなつくりで、安直な大団円だけを求めると痛い目にあうよ、っていうね。これが作家性というやつだろうか。

『鉄男』はですね、これはなんと、台湾は新竹市、日本統治時代に建てられた築90年の劇場で観たんですよね……作品の内容と併せて忘れ難い鑑賞体験となりましたね……(いま確認したら2023年8月で営業終了していた、ウソでしょ)。外がスコールの土砂降りで、自分は足元とか肩からびしょ濡れで、半円形の舞台の奥にスクリーンがあってそれを見降ろすように客席が取り囲んでいて、暗くて広い空間にあの金属音が響きわたる…!なお観客は自分含めて二人でした(怖すぎて頭を抱える)。そもそも身体変容系のホラーは苦手なのに初手からがっつり人体と金属が融合するし、謎の体液とか汗とか血で画面内はずっと湿ってるし、悪夢みたいな不安定で断片的な映像がすごい密度で続くしで、ちょっとヤバかったです。まあ本作を今回以上の(ある意味で)過酷な環境で観ることはもう無いと思うので、良かった、かな……………。

東京ゴッドファーザーズ今敏監督の作品は10年以上前に観た千年女優以来なのですが、絵が綺麗で創意工夫に満ちているのに比して、女性観や家族観があまりにも旧来の家父長制や保守主義そのものでちょっと無理だった……。なんかクリスマス映画のカテゴリでレコメンドされる機会が多いイメージの本作、個人的には年末年始みたいな時期に家族で観るのはおススメしないな……辛い気持ちになりそう。

■続☆ウォン・カーウァイ祭り!

『若き仕立屋の恋 Long version』
楽園の瑕 終極版』
欲望の翼
いますぐ抱きしめたい

なぜ「続」かと申しますと、2022年に恋する惑星』『天使の涙』『ブエノスアイレス』『花様年華』『2046』を観て(初見!)、他のも観れるかな~とぼんやりしていたら2023年も映画館で上映してくれてありがとう、だからです。これでウォン・カーウァイの初期作品はすべて映画館で初見だったことに…!嬉しい!!というか、映画館である程度集中して観ないと自分には良さが理解しにくい系統ではあるのよね。特に恋愛関係が全く分からん場合があり(いつからこの二人が付き合ってる?んだっけ??みたいになる)、あと画面が美しすぎてそっちに気を取られて、ストーリーについていけなくなるんですよね。困ったね(※2022年も同じことを言っていた)。

2023年は、レスリー・チャンという俳優について、熱狂的なファンがたくさんいるのは知ってたけどあんまりピンと来てなくて、しかし代表作を続けて観るとさすがに”理解”が捗った、この人はヤバい…!となった年でした。今さら。近づく人間すべての人生を狂わせる、強烈な磁場みたいな魅力を持った人なんだね。そしてその磁場のせいで、自分自身の進む方向さえ見失ってしまうような危うさも、その魅力には含まれているわけですが。こんな人に出会ってしまったら、幸福になるのが難しそうだね!

それでですね、自分的には欲望の翼アンディ・ラウが良かったです!アンディ・ラウも今までは顔がいいな~くらいの認識だったんですが(最低の感想)(主演作だと墨攻』『インファナル・アフェア』『名探偵ゴッド・アイ』は観たことある)、いやもちろん顔はいいんですが、恵まれた身体性に裏打ちされた圧倒的な陽の気と、才能と技術の結晶である繊細な芸術性のマリアージュ?が素晴らしかったです。ブエノスアイレスにおけるチャン・チェンみたいな役回りなんだけど、そういう、主人公たちの心を遠くに連れ出してくれるキャラクターの良さ、物語の中に涼やかな風が通る瞬間みたいなものが、ウォン・カーウァイ作品の好きなところです(ロマンスが分からないから……うぅ)。

■インド映画は別記事で!

『WAR ウォー!!』
『バンバン!』
『ヤマドンガ』

■そういえばポストカードを頂いた企画「12ヶ月のシネマリレー」

カラヴァッジオ
薔薇の名前
『左利きの女』
『ことの次第』
裸のランチ

2022年から開催していた「12ヶ月のシネマリレー」というリバイバル上映のプロジェクトで観たやつです。12作品のスタンプラリーがあって、コンプリートすると参加賞と抽選プレゼントがもらえる企画で、12作品計24枚組のポストカードを頂きました!やったね!実はラストエンペラーもこのシリーズでした。しかしそれ以外は、こういうレコメンドが無かったらおそらく観ることは無かったであろうラインナップで、とはいえ評価が定まっているだけ合ってさすがにクオリティが高く、映画の世界の広さを再認識したのでした(なんだその感想は)。画力(えぢから)の強さにビビっていたらエンドロールまでヤバかったカラヴァッジオ、これがみんなが言ってる無限の図書館と読んだら死ぬ本か~!てなった薔薇の名前、クローネンバーグのそういうとこが苦手だよ…って感じの裸のランチ…。

いや~、映画って本当にいいものですね!!!

■その他(その他とか言ってごめん…)

バニシング・ポイント
フラッシュ・ゴードン
エドワード・ヤンの恋愛時代』
ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ
ギルバート・グレイプ

なんか有名なやつだから観ておこうかな!って観に行った作品たちです。インターネット有識者のみなさんには頭が上がらないね!!!

アメリカン・ニューシネマ、分からぬ…と思いながら観たバニシング・ポイント、ここではないどこかを求めるロード・ムービー的な要素や、現実社会への諦念と嫌悪、硬直的社会構造からの離脱、それらを装飾するストーリーやキャラクターを極限まで削り取ったミニマムで鋭利な映画でした!この世界から脱出した主人公は、観客を置き去りにしてどこまでも走り続けるんでしょうか…。

フラッシュ・ゴードンキッチュでゴージャスな美術や衣装を中心に大変楽しみましたが、異星人の結婚式に結婚行進曲が流れたところでさすがに爆笑した、しかもアレンジがやたらかっこいいし。なんか愛されるの分かるよ、クイーンの音楽は華やかで素敵だしね。

エドワード・ヤンの恋愛時代』、こちらは台湾ニューシネマですね。エドワード・ヤン監督作品ははじめて観ましたが、いや、オシャレね…(圧倒)。公開直後の監督インタビューを見つけたので読んでみたのですが、外省人であり母がクリスチャン、自身は大学でアメリカに留学していたという経験が、間接的ではあれこの映画の登場人物たちにいろいろな形で投影されているのかなと思いました。

ジェイソン・ステイサムガイ・リッチーのデビュー作!?ということで観に行ったロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ、二人ともブレないねえ~~~!!!君たちは死ぬまでそのままでいてくれよな(知らんけど)。個性的な俳優陣を活かす凝った脚本、そしてスタイリッシュなのに治安が悪い!!ていうかロンドンは賢い悪党の巣窟だな…(偏見)。

なおギルバート・グレイプについてはこちらで散々自分語りをしたので…はい…。

アートマンの名作たち!感想メモはこちら
ウォレスとグルミット
「チーズ・ホリデー」「ペンギンに気をつけろ!」「ウォレスとグルミット 危機一髪!」「ウォレスとグルミット ベーカリー街の悪夢」

ひつじのショーン
「映画ひつじのショーン ~バック・トゥ・ザ・ホーム~」「映画 ひつじのショーン UFOフィーバー!」「ひつじのショーン クリスマスの冒険 劇場公開版」

書きながら思ったんですけど、なんで全部の感想を書こうとしたの!?!?大変じゃん!?

ということで、ちょっと息切れ気味の旧作感想でした!どこで息切れしているか探してみよう!…。旧作で珍しいやつはともかく、配信とかで気軽に観れるのもけっこうあるんですけど、映画館で観ると作品に集中できるのがいいよね、と思いました。特に旧作は、テンポがゆっくりだったり耳馴染みのない単語が出てきたり、あとは自分にとってのフックがどこにあるか分からないから、家で迂闊に観ると上手く咀嚼できない場合があるんよね。

しかしさすがに3年で1000本近くの映画を観ると、映画を観る基礎体力みたいなものが付いてきた感覚があります。小説とかでもそうですが、自分みたいな普通の人はいきなり古典作品に触れても楽しめないじゃないですか。だから古い映画を観るのは(選ぶのも)難しさがあると思うんですけど、だいぶそこらへんが大丈夫になってきた。とはいえ、今のところは50年前くらいが限界です。

2024年も引き続き、機会を積極的に活用して映画館で旧作映画を観たいと思います。なんか教養主義っぽいな!

では!!!!