窓を開ける

今のところ映画の話をしています

映画「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」を観たら恐竜の話をしたいのに

いや分かる、分かるんですよ。

レジェンドが勢ぞろいして愉快だったとか(4人も揃うとさすがに初代シリーズの正統な続編の貫禄が出るわね)、なんでこのシリーズでメインのディザスターがあれなんだとか、本筋のストーリーが弱すぎるとか、ケイラとか密売業者のお姉さんがマジでかっこいいとか、マルコム博士がセクシー担当として覚醒していたとか、後はなんだ、恐竜以外の気になる要素が諸々あるのは承知だけどさあ!!!!

恐竜の話を、したいのよ!!!!(大声)

他の要素で気を散らさないでくれよ!!!!

※※恐竜以外にも翼竜やら爬虫類やらが出てきたのは承知ですが、本稿ではまとめて恐竜と呼称させていただきます!

 

ていうか、公式サイトにアップされてる”プロローグ”、観ました!?!?

なぜそれを削った!!!!それを、デカいスクリーンで!!!見せろ!!!!!

たった5分じゃん…上映時間が146分だろうが151分だろうが誤差でしょ…途中の良く分からんシーン削ったら3分くらいは捻り出せるでしょ………いやマジでさあ、なんであのプロローグを削ったかね………これしばらく言い続けると思うわ………恐竜映画なのに恐竜の見せ場を減らしてどうする………。

なんかあのプロローグを削った判断に象徴されるように、本作の製作陣、恐竜という存在への執着がどうも薄いんですよね~~~なんだろうな~~~。「ジュラシック・パーク」第一作で描かれたような、人間が自然へ手を加えることの危うさ、生命というのは複雑なシステムであり、人間が容易にコントロールできるものではないという明確なメッセージ、それも無かったしな~~~むしろ人間が”コントロールできる”ものに矮小化されていたような印象すらある。その点では前作「炎の王国」のほうがまだマシだった。生命が、人間の思惑を離れて躍動するカタルシスが多少はあった。

それとさ、ラストの見せ場が暗くて分かりにくい!!!恐竜がもったいない!!!暗いシーンは洞窟の中だけで十分じゃ!!!せめて野球場みたいなライトで照らせ!!

というかですね、前作まではジョン・ウィリアムズのスコアがいい感じにサンプリング(?)されてて要所要所でパブロフの犬のごとく盛り上がれたんですが、それも無かったからクライマックスがよく分からんかった、というのもある。

あとさ、ジュラシック・パークとかロスト・ワールドの魅力って、明確なヴィランがいないことだとも思ってるんですけど。世界征服とか人類滅亡とかを企むようなのがいなくて(せいぜい金を儲けたい商売人)、なのに事態が破滅的な方向に転がっていくというディザスター映画っぽい面白さがあって、それが恐竜というコンテンツを扱う大きなメリットでもあるわけじゃないですか。そういう観点においても、今回のヴィランは中途半端だった。ケチな小悪党でもなく、人類なんかどうでもいいから恐竜のために地球を温暖化させよう!みたいなサイコパスの創造主タイプでもなく。中途半端だから退場シーンも盛り上がらねえのよ、まったくもう。

自分で書いといてなんだけど、「恐竜のために地球を温暖化させよう!」っていうヴィラン、いいな……現実の世界的な流行りの話題にも乗っかれて、映画的にも面白い画が撮れそうで……。

………。

あぁ、自分の思い入れが、お気楽な鑑賞体験の邪魔をするぜ……うぅぅ。

あ、恐竜の登場シーン自体はめちゃくちゃ良かったです。雪原を行く羽毛恐竜たちとか、自在に空をゆく翼竜たちとか、竜脚類が水の中にいるのも良かったし、獣脚類の新しい奴らはふわふわでかわいかったし、撮影技術として、アニマトロニクスが駆使されてるのも良かったですよね。見たかったシーンがたくさん見れた。違法な”恐竜牧場”もね…いいよね…。

都市に現れる恐竜、現生生物と共存する古代生物、っていう画もそれだけでテンションあがりましたね。夢のあるビジュアルを最高の技術でみせてくれてありがとう、っていうのは当然あるよ、もちろん。それが本シリーズに期待されるひとつの要素であることは間違いないしさ。

それはいいんよ、それは。問題はそれらがメインストーリーとほとんど関係なかったことでさ。

※以下、ネタバレありで具体的に語りますので!!

※まあ予告編を観てればほぼネタバレあるんでいいかなって気もしますが…

※ただのグチなんで、考察とか解説は無いです……

バッタ……

いやとにかくさ、なんでメインのディザスターが蝗害なん?!?!っていう話よ。恐竜が世界中に出現して大変→わかる。保護区を作ってそこに集めよう→わかる。そこの管理を巨大バイオ企業に任せたよ→まあわかる。バイオ企業が人為的に蝗害を作り出したよ→ん???恐竜ではなく???ってなるじゃろそれは。

でそれとは別に、不老長寿のためにラプトルまたはクローン人間のバイオデータを狙ってるけど、バッタを滅ぼすのにも使えるんだ、とか言われたら、マッチポンプ!!ってなるじゃろ!!

ここの一連の流れ、マジで意味わからんかった…まあ自分が恐竜しか見てなくて人間同士の話をほとんど聞いてなかったのも悪かったけど(ごめん)。意味わからん流れにレジェンド4人を無理やり巻き込むからさらに訳わからんことに…そんなことにこのメンバーを使うなよまったく。

例えば、恐竜の保護区をつくって恐竜のために白亜紀の環境を再現しようとしたけど(レジェンドメンバーはそれに協力してたみたいな)、巨大昆虫が逃げ出してさあ大変!ラプトル(とメイジー)の遺伝子でなんとかしようとしたら、それをライバル企業に売り飛ばそうとする共同経営者が現れて!?そこに保護区の解放を狙う恐竜保護過激派団体も絡んでた(クレア)!どうしよう(オーウェン)!!みたいな話にしてくれれば良かったのに…なんでこんなことに。またもや自画自賛しますけど、このストーリーけっこう良いと思いますが!どう!?

そもそも14歳にもなる天才少女を物理的に攫おうとするな…丁重にあの大学っぽいところに招待したらたぶん自主的に家出すると思うよ…そのほうがヴィランもクレバーに見えるし、ラストで再会したクレアとの絆も際立つじゃろ…。

で。

蝗害の話に戻るんですけど。人為的に作り出したバッタを最後、これまた人間がつくった病原体に感染させて滅ぼすじゃないですか。いやそれさあ……恐竜はともかくバッタなら人間がコントロールできるとでも思っとるんか??バッタ博士に謝れ??ってなりませんか。メイジーちゃんもラプトルのブルーも、人間が(傲慢にも)作り出した生命でしょ?それを利用する時点で、人間がすべてをコントロールできていることになってしまわんかね。あと無性生殖とクローンは別ものなんだけど、混同してない??っていう。字幕の翻訳が良くなかった可能性はあるが。メイジーちゃんは結局どっちなん…どっちでもいいけど(よくない)。

もちろん、モンサント社(現バイエル社)なんかで話題になるような、超耐性遺伝子組み換え作物の問題とかがここ数年ホットなのは知識としては知ってるし、本シリーズのテーマと絡めたいのも理解できるけど、本作でそれが成功しているとは言い難い。だったらイナゴが人間の思惑を超えて進化してすべてを食べ尽くすぜ、っていうほうがよほど黙示録的で面白いと思うが……。

 

ラストとか、恐竜保護活動とか

で、ラストよ。前作「炎の王国」で、それ次回作どうするん??ってみんな(主語が大きい)が期待と不安に振り回されてからの続編、不安のほうが的中しちゃったじゃん!!

恐竜は保護区へ、っていうのはとりあえずの落としどころとしてはアリだけど、作中でさえ、ひとつの企業に任せて大騒ぎになってるのに、結論に至る議論のプロセスが全く示されないのがヤバい。恐竜みたいな大規模なシステムを、誰かが独占的に管理するのは無理だって、この30年間で学んだのではないのか、人類。

そんで保護区の運営主体とスポンサーは誰なんよ。国際機関とか設立しないと無理じゃない?その中心メンバーがレジェンド4人とクレアです、ってなれば割と納得感があったと思うんだよな、もったいない。

とはいえ、ストーリー上、人間社会に進出して時に被害をもたらす恐竜、みたいなのが前景化されなかったので、逃げたな……って思いましたけどね。意図的に避けたのかは知らないけど、前作ラストから当然予想される議論から、逃げたよね。

逃げた結果、保護区に入れなかった恐竜の処遇が謎のままになってしまったよね。モササウルス(デカい魚みたいなやつ)とかどうするん??人的被害が出てから考えるんか?どっかの政治家か???あと密売市場の取り締まりとかは??それこそ反民主的国家とかの資金源になってそうですけど???

せっかく2022年を舞台にしたのであれば、現実の気候変動への反応をざっと眺めるだけでも、恐竜みたいな非人間的スケールのディザスターに対しては、徹底的に駆除、緩く共存、保護過激派、に分かれるくらいは自分にでも想像できるよ。そこに国際政治も絡むのは間違いないじゃん。ちゃんと工夫すれば、もうちょっと社会批評的な視点を取り入れられただろうよ。そういうのをこういうビッグバジェットの映画で見せてくれよ!!!そしたらクレアやオーウェンの活動がただのエピソードじゃなくなったし、二人の立場の違いもクリアになった(そしてメイジーちゃんは第三の道を行く)と思うのに。なんなんだよ……ちゃんとやれ……。

 

オマージュ(?)やりすぎはよくない

総集編かよ!って突っ込みたくなったわね……。良くも悪くも、既視感のあるシーンばっかりであんまり楽しくなかったんだよな。面白かったの、クレアがテリジノサウルス(爪がすごい奴)から逃げるところとかですかね(ただこれも、事前にテリジノサウルスの能力の説明が無かったから盛り上がりに欠けた)。あと密売業者の白い服のお姉さん。

オマージュが生きるのは、圧倒的に新しいシーンがあるからであって、オマージュだけで話を進めてしまったらそれはただの総集編なのよ。グラント博士とか、登場シーンがいちばん印象的ってどういうことだよ。もったいなさ過ぎるでしょ。

オーウェンの手かざし(?)も、バイクチェイスも「ジュラシック・ワールド」1作目では新鮮だったけどもはや自己模倣だろ、それは。いっそガーディアンズ・オブ・ギャラクシーでやりなさいよ。

ディロフォサウルスくん(エリマキの子)も元気そうで嬉しかったけど、1回でよくない?ネタは割れてるんだからさ。そもそも保護区の総責任者なんだから、マイクロチップを操作して緊急避難くらいは出来るようにしときなさいよ……今回だったら、そういうのがあるから高を括ってたら不測の事態でピンチになって、誰かに助けられて司法の裁きを受ける、という展開のほうが良かったんでは、と思いました。

はい!

ということで、初代「ジュラシック・パーク」強火勢が、「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」は解釈違いなんだよなあ~~ということを長々と書きました!

レジェンドたちがキャッキャしてるのは楽しかったし、恐竜のCG模型とかたくさんあると思うので、ミニドラマシリーズとかやってくれたら嬉しいです!!!

では!!!