今年のまとめに入りかけたところですが、最近観たホラー映画「MEN 同じ顔の男たち」がなんかこう、言いたいことが山ほどあるタイプの映画だったのでメモ書きしておきます!
面白かったというよりは興味深かったというか、積極的におススメはしないが、なんだか後を引く映画でしたね!!!!友達がいれば、感想を話し合ったりするのも楽しいんじゃないかな…友達がいれば…。
ということで、この先、軽率にネタバレしますので気をつけてね!!!あと言いたいことを言っているだけなので、解説とかは無いです。個人的には、同じ回に来ていたカップルと思しき若い男女二人組のそれぞれに、別々に感想を聞いてみたかったですね。特に男子、最後らへんの衝撃シーン、トラウマにならん??大丈夫????
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あらすじ:お一人さまバカンスに出かけた田舎の村がヤバかった。
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いや~~~高い金を払って一棟貸しの田舎風コテージ(というよりお屋敷)に泊まりに来たのにこんな目に会いたくねえなあ!序盤に主人公が「管理人がちょっと田舎のオジサンでデリカシーが無いのよ」って言ってたけど、それだけでバカンスにケチがつくよねえ~~~最悪~~~!!
って思ってたら、途中から加速度的に男たちが気持ち悪くなっていくのがすごかった、マジでヤバかった。
で、そもそもバカンスに来る原因になった配偶者なんですけど、こっちの人生にも限りがあるのにお前なんか相手にしてらんねえよバーカ!!って思いましたが、最初からそういう態度をあからさまに出してしまうような人間は餌食にならないんだよね…、ていう。
※ここからネタバレが加速するよ!!
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なんか男というのは生きてるのが辛いんだ、みたいなことを繰り返し言ってきますけど(たぶん最後の衝撃展開もその辺のメタファー?なんだと思うけど)、生まれ落ちた苦しみを他人に負わせるなバカ!自分でなんとかしろ!!罪悪感を植え付けようとするな!!!て思いました。
ていうかよ、最後、勝手に再生産してどんどん立派になってんじゃねえ~~!!!気持ちわりい~~~!!!(監督の思うツボなんだよな)
気持ち悪い男たちの中でもまだ害が少なめの少年が「僕を仕留めるなら今のうちだよ」みたいなことを言ってたの、マジでその通り過ぎて、お、君いいこと言うねえ!って一瞬思っちゃったじゃんねえ。そうだ、少年なら物理的に勝てる!成長する前に早く止めを刺せ!!…みたいな。
そういう不条理きわまる怪異に立ち向かう、主役のジェシー・バックリーが凛々しくて良かったですね。最低最悪の配偶者に絶望し、そいつを生み出した男たちのコミュニティに恐怖しつつも呆れかえっている様子が、すげえリアリティあった。そして、彼女のように公私ともに自立した聡明な女性でも、あんな訳の分からん男たちの塊に一人で立ち向かうのは厳しい、というのも現実と地続きで辟易するね。
邪悪過ぎるジェンダーバイアスやミソジニーを内面化し、有形無形の攻撃を仕掛けてくる男たちの老若を問わない没個性っぷりは、日本のTwitterに入り浸っていればある程度どなたもご存知と思いますが(他の言語のTwitterは知らないが、英語圏は似たようなものだという話はちらほら目にしますね)、それをこういう形で映像化しようと思ったアレックス・ガーランド監督は何があったんだ、と思わなくもない。
ただまあ、あの没個性的な有害な男たちが、自然に森から生えてきた、みたいに読めるのはあんまり良くなかったのでは、という気がする。没個性的なのと併せて、個々の責任を免罪するみたいになっちゃうし、文化や社会の影響をまるごと無視しているという解釈ができてしまう。男は生まれつき有害なので、て言われても困惑するじゃろ。
あーもしかして、サブリミナル的に挿入された宗教的なモチーフがその辺を説明している…のか??偶然ですけど鑑賞直前にこの記事→(なぜスタバのセイレーンは股を広げているのか - 本しゃぶり)を読んでいたので、おお、知ってるやつが出た!とは思ったけど、物語の謎は深まるばかりであった。監督がどういう意図で宗教的な演出をいれたのか、いま思い返しても謎。そのうち有益な解説が出てくるであろう…パンフ買いそびれたのが良くない。
あと、キリスト教(など)でリンゴを齧る女といえば旧約聖書の「楽園追放」ですが、まあそれは割と親切に作中で説明してくれていた。そのまんまだった。
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ところで本作最大の功労者、ロリー・キニアなんですけど(延べ出演時間だったら主人公を軽く超えていると思われる)、マジで演技が上手すぎて同じ顔に見えない問題が発生していた。自分、平たい顔族なんでね…。舞台中心に活動されてる俳優なんだね、表情や物腰、ちょっとした仕草の作り込みが上手すぎる。日本の俳優でいうと、いい人っぽいけど自覚的/無自覚的に邪悪、かつ演じる年齢の幅が広いとなると、阿部サダヲとかどうでしょうか。
それはともかく、ビジュアル面でまさかの「グリーン・ナイト」とちょっと被るという奇跡が起こっていた、なんか必然性があるのか…???まったく癒されないエバーグリーンをこんな立て続けに観る羽目になるとは思わなかったぜ。
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※ここから「エクス・マキナ」の話もするので未見の人は自衛してね!!
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アレックス・ガーランド監督と言えば「エクス・マキナ」ですけど(たぶん)、あちらは男一人vs女たくさん(を背負った一人)だったけど、本作は逆だな~と思いました。で、「エクス・マキナ」の女たちは、たくさんの望まない犠牲を払って、全ての死者たちと協力して自由な未来を勝ち取ったけど、「MEN」の男たちは複数の屍のうえに空虚な化け物を産み出してて、比べると面白い。そしてどちらの作品でも、自分が認める”愛”以外を受け入れず、それ故に愛を得られないのは男のほうなんですね。なるほどねえ。
ていうか「エクス・マキナ」に出てきた男二人もたいがい気持ち悪かったよな~監督のジェンダーセクシュアリティについては何も知らないが、なんかこう、あるんだろうか、生涯のテーマにしたいような問題意識が。
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はい、ということで「MEN 同じ顔の男たち」の感想でした!!基本的に、ずっと困惑していましたね、あと気持ち悪い(褒めてるよ!)。
カップルや家族で観に行くのは全くおススメしませんが、ホラー耐性のある大人の女性とかは観て気持ち悪くなったらいいんじゃないかな!!男は知らん、若い男子はトラウマになりかねないので気をつけて!
では~!!!