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今のところ映画の話をしています

2023年、映画館で観た海外アニメ(広義)の話

※本稿は大晦日に書き始めたためテンションがわやです※

 

年が明けたーーーーーー!!!!令和6年!?!?誰に断って!?!!

ところで2023年、海外アニメ!!!めちゃくちゃ観た!!!!太字のタイトルだけでも観てって!!!(なんの必死)

もう個別の感想を書く余裕はないが、アニメーション表現の豊かさをこれでもかと見せつけられて最高の気分だよね!!!なお国産アニメはマジで観とらん、もう文脈とか表現技法が先鋭化しすぎてちょっとね。あとマンガ原作ありのアニメ、苦手なんよ。台詞とか間合いのテンポが合わなくてさ…。といいつつ巨匠の引退アニメと砂漠の戦車アニメと国民的テレビ人の自伝アニメは観ました。

閑話休題

ということで海外アニメ花盛りでした!たくさんあってちゃんと書けるかわからんが、頑張ってみますよ!!

最近?なのかなあ、ストップモーションアニメの野心的な作品がいろいろありましたね。デジタル全盛の時代に手仕事の可能性を探る、みたいなね。スタジオライカがあらゆる意味での先頭を突っ走っていた印象がありますが、今年はそれ以外のスタジオからの作品がいろいろありました!

例えばギレルモ・デル・トロピノッキオ』、特撮を愛してやまない監督だからむしろ納得感のある選択肢だったストップモーションアニメという表現技法。独特のデフォルメが効いたキャラクター造形と、背景美術などの細部へのこだわり。ファシズムの暗い影が色濃いストーリーの再解釈と併せて、さすがに唯一無二の世界を形成していた。

で、ストップモーションアニメで忘れがたいのが、恐るべき技術を注ぎ込んで撮られたであろう『マルセル 靴をはいた小さな貝』ですね!ストーリーも素晴らしかったんですけど(多様性の尊重、立場を越えた友情、家族の絆と個人の生き方を区別するやり方について、SNSとの付き合い方!など)、いやどうやって撮ってるの!?ってなりましたね!技術もテーマも最先端かつ普遍性があり、賞レースを席巻したのも納得だよ!!残念ながらパンフレットは無かったんですけど、元がインディーズで製作された短編作品なのでYouTubeメイキングやインタビューなどいろいろありました。いや、ちょっとこれはすごいですよ。映画館で集中して観るのももちろんよかったですけど、家でパーソナルな雰囲気で観るのも味わい深くてよいと思うので、観れる人はぜひ観てください、年末年始の(人付き合いに)疲れた心に染みるんじゃないかな……。

テレビで、エストニアストップモーションアニメ制作スタジオのドキュメンタリーを観ていたら、デジタルカメラの出現が作品制作に対してかなりのインパクトだったという話が出てきて、デジタル機器ありきのストップモーションアニメ技術が成熟してきた頃合いなのかな~と思ったりしました。

ストップモーションアニメみたいな、ある意味でアナログな手法と一線を画す、2D⇔3Dアニメの隆盛もすごかったですね!デジタル作画の技法が進化しまくって、イマジネーションの向こう側に連れて行ってくれるような作品が複数あってびっくりしました!

まあ今年の海外アニメで外せないのはスパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』ですよね。これに異論はなかろうよ。2018年の前作も復習のために見なおして、いや充分すごいが!?と思ったところにとんでもねえ新作だったのでいや~…言葉を失うわ。もはや2Dと3Dの区別に意味は無いな、と思わされた一本でもあります。しかしほぼ3時間の長尺で広げまくった風呂敷をまったく畳まずに「続く…」ってなったのはさすがにビビった、おかげで年ベスに入れられなかったじゃん…。

同じ系統のアニメで、続編とはいえほぼ独立系の長ぐつをはいたネコと9つの命』も素晴らしかったですね!ピカレスクアクションものということで、2022年の『バッドガイズ』の進化形っぽい雰囲気が楽しかった!!絵や動きの情報量の取捨選択のセンスが抜群で、レトロっぽいイメージと最新型アニメの融合が果たされていた気がしますね。

…とか言って満足しそうになっていたところへ現れたミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』ですよ!タートルズには特に思い入れが無いのでスルーしようとしていたが、なんか評判が良さそうだったのでぼんやり観に行ってひっくり返りました!ていうか10代の少年たちが何かを成そうとする姿に胸打たれない筈がなく、なんですけど、彼らの活発な好奇心や世界への興味がそのまま映像になったような、賑やかで目まぐるしくて親密な、とっても楽しいアニメーションでした。あとストーリーはなんか前半で普通に泣いた…動物と子供に弱いんだってばよ。

次は上記の大作アニメとは全然別の方向性で度肝を抜かれた2Dアニメたちの話!

まずは『プチ・ニコラ パリがくれた幸せ』です!フランスのアニメ界、ものすごく充実してるよな…本作はそのクオリティで本邦の観客を黙らせた神々の山嶺のプロデューサーが監督の一人として参加しております。プチ・二コラはフランスの児童文学に出てくる人気キャラクターで、その生みの親である二人の作家の物語をアニメにした作品ですね。ちょっと説明が難しいんですけど、原作の鉛筆絵の線、水彩絵具のにじみまでがそのまま動き出してて本当にびっくりした。え、その絵が動くん!?ってなってさ。二人がなぜプチ・二コラというキャラクターを生み出し、どのように育てたか、それには二人の来し方が密接にかかわっていて、映画としてはほろ苦くて優しい友情の話なんですが、その雰囲気に水彩のペン画や鉛筆画がピッタリで、ものすごく洗練されていて素晴らしかったです。

フランスのアニメ、作家や作品の個性が強く出ていて、なんか日本の漫画とバンデシネの違いみたいなのがそのまま日本とフランスのアニメの違いみたいになってるなと思いました。フランスアニメの現在の隆盛にも理由があって、2000年代初めに国のプロジェクトとしてアニメーターや監督、プロデューサーの養成を始めてるんですよね。アニメ制作のプロセス全体を視野に入れる辺りがさすが文化大国の実績を感じるな、と思う次第です(翻って本邦……アニメ制作については全くの門外漢なのでここでは踏み込まないが…)。

続いては同じくフランスの大御所による『古の王子と3つの花』!あの~、ミッシェル・オスロ監督の作品を拝見したのは初めてなんですけど、なんぞこれ!?ってなりましたね!!(見聞が狭いからそんなのばっかりだよ)いやほんとに…、静止画も十分に、どうしようもなく美しいんですけど、それが煌めきながら動いて物語を語るんですよね…こんなのどうやってディレクションするん!?っていう疑問と驚きが最後まで途切れることなく、物語の抽象度の高さも併せて、すごい重厚な鑑賞体験でした……ほとんど美術工芸品のような映像世界であった。マジで気合入れて体調を整えて、観て……。

2Dアニメの可能性もまだまだ未踏の地がありそうだな、とか思っていたら年末になって南米はブラジルから飛び込んできたのが『ペルリンプスと秘密の森』です!後期印象派を思わせる鮮やかで自由で伸びやかな背景美術に、プリミティブでちょっと不思議なデザインのメインキャラ二人(二匹?)、飛び回る鳥や小動物、うごめく植物の影。その中で揺蕩うように二人と同じ道をたどるうちに見えてくる、世界の秘密。現実の世界を対立と分断が覆うこの時代に、思いもよらないやり方で真っ直ぐなメッセージを描いて、本当に心を動かされました。これもアニメーションならではの表現であり物語なんだよなあ!美しくて目に楽しくて、アニメってすごいなあ~って観てたらとんでもない剛速球のストレートを投げ込まれて打ちのめされたよね。現実を変えようという覚悟を決めた表現者の迫力を感じました。

さてたぶん都会では2022年にはすでに話題になっていた中国発の3Dアニメ『雄獅少年 ライオン少年』をようやく観たのも2023年でした!王道スポ根青春ストーリー!…なんですけど、普通に思ってたより遥か遠くまで連れて行かれる繊細で大胆でリアルと向き合った展開に震えがきますよ!前半ですでにボロ泣きしてたんですけど最後まで泣かされたわ…本当に熱くて、切実で、前向きで、優しくて、強靭な夢や願いを真っ直ぐに追いかける少年たちや周りの人々の姿が、いつまでも心に残る素晴らしいアニメでした。アニメーションそのものも尋常でないクオリティで、圧倒されっぱなしだったね。終わり方の潔さは貫禄さえ感じました。やっぱり社会の勢いがあるところはすごいねえ…。

ちなみにアニメーションの枠に入れていいのかどうか迷うところだけどかといって他に適当なカテゴライズも難しいストップモーションアニメ、『オオカミの家』の話をば。自分は地方都市の主要駅ちかくの映画館で観て、客の入りは3割くらいでさすがに多いな、と思ったんですけど、東京のほうでは満員御礼が続出したそうじゃないですか!?ちょっとみんな大丈夫!?みんなの精神状態がちょっと心配だよ!?ってなりました……いやとんでもなかったな……現代美術のインスタレーションなら数分で離脱できるけど、この悪夢が立体化したような映像を80分も身動きできない状態で観せられるの、かなり厳しくない!?!?映像もすごいが音響もなかなか圧がすごくてほとんど暴力的でさえあった。いや~、しんどかった~~~~。まあ元気があるときに観たらいいんじゃないかな……。

こうして並べて観ると、色んな地域の色んなアニメが観れたなあ~!!っていうありがたみをひしひしと感じる!!配給会社のみなさま、映画館のみなさま、本当にありがとう!!!

あとはなんか『ひつじのショーン』と『ウォレスとグルミット』の長編シリーズのリバイバル企画をやってたのでちゃんと観たよ!『ウォレスとグルミット』の『ペンギンに気をつけろ!』『ベーカリー街の悪夢』は初見だったんですけど(たぶん)、すげえちゃんとしたクライムサスペンスでびっくりしたね!っていうか犯人たちがガチで邪悪で怖かったわ!!プロットも伏線も複雑だったしオチもブラックだし、けっこう大人向けだよね???『ひつじのショーン』シリーズが子供むけだから油断してたのが悪かったよ、ごめんよ…(?)。ウォレスが惚れっぽいのはグラナダ版ホームズのワトソン博士のキャラクターからだろうか、と思ったけどそうするとグルミットがホームズかつハドソン婦人で八面六臂の活躍がすごい。いやもう犬じゃなくていいだろ。

実は『ウィッシュ』も年末に滑り込みで観たんですよ、まあディズニー本体のあれこれは気になるところではありますが…。ヴィランの造形がすごく現代的で、現実世界で言うと狭義の為政者にとどまらず、巨大グローバル企業のトップとか世界的なインフルエンサーとかでも当てはまりそうな”悪”を告発していて興味深く感じました。でもこのヴィランの何が悪いか分からない、という感想もあるらしいが…(自分が見聞きしたわけではないので何とも言えないけどさ)、そんなわけなくない?っていうね。

はい!!

というわけで全然まとまりませんが2023年に観た海外アニメ映画の話でした!!バラエティがすごい!!!それにアニメーションでしかできないやり方で、現実の課題や問題をどうやって描写し、伝えていくか、という問題意識を感じる作品ばかりでした!!アニメという表現技法の可能性についても盲を啓かれる思いです。

引き続き、2024年も良い出会いがありますように!

では!!!