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映画『貴公子』を観て監督の趣味が炸裂している!と思った話

ちょっと出遅れたんですけど、パク・フンジョン監督の『貴公子』、観ました!!!めっちゃ面白かったですね!?!?監督の実績およびポスタービジュアルの雰囲気から、バキバキの血みどろノワールアクションかな?と思っていたのですが、そしてそれはほぼ正解だったのですが、それに加えて魅力的なキャラクターを生かしたスクリューボール・コメディの趣きもあって非常に満足度の高い一本でした!!

で、物語の筋立てはシンプルなんだけど、語りの工夫が効いてるのと、監督の美意識というか趣味が炸裂したビジュアルと設定が最&高だったなあ~~という話をメモっておきますね!

ということでたぶんつるっとネタバレするから、まだ観てない人は気をつけてね!!前情報無しで観たほうが楽しいと思うし!!!いいね??言ったからね!!!!

粗筋~真面目で薄幸な貧乏男子が悪い人たちに命を狙われる!分かりやすい!

まあとりあえず途中まで、”魔女”ユニバースが始まるかと思ってドキドキしたよね!特に貧乏男子・マルコくんの実家(実家?)が医療コンツェルンだと判明したときにはまさかこの好青年を改造人間にする気か…??いやこの監督ならやりかねんがそんな展開はイヤ過ぎるが…??とか考えていたが、そんな鬱展開にはならなくてホッとしましたね。好青年が不幸にならなさそうで本当に良かった!!!ちょっと癖の強い友達ができたみたいで安心したよ!安心?

癖が強いっていうか、なんだこのキャラ!!ってみんな思ったであろう「貴公子」ね。なんだあれは。自らを何らかの(たぶん”殺し”を含む荒事の)プロと称し仕立ての良い三つ揃えと革靴でキメちらかしているわりに煽り耐性ゼロで口数が多く、笑顔が素敵な高身長&美形のお兄さん!マジでなにごと??

監督、ラブコメで頭角を現したキム・ソンホを主役に迎えてこのキャラ設定か~~!!って感心しますね。ていうかその設定でこっちが主役かーい、みたいな。

後で調べて知ったんだけど、マルコくん(友達…?)を演じたカン・テジュはすげえ倍率のオーディションで選ばれたほぼ新人らしく、なるほど「貴公子」ありきの話なんだな、と納得はするのですが。

キム・ソンホ、スタイルが良くてスーツが似合うのと、長い手足を活かしたダンスみたいなアクションが映えて良かったですねえ!あのはにかみスマイルをトレードマークにして惜しげもなく披露してくれたのも良かったし、笑ってるのに不穏&不遜な雰囲気なのも超いいと思う!思うけど盛り過ぎだよ!!!監督!!!!

マルコくん(生真面目な薄幸の貧乏青年)への強烈な執着も含め、「貴公子」の設定だけでお腹いっぱいです、ありがとう!!!!

これは個人的な趣味の話ですが、精神が頑健な青少年がフィジカルで生き延びる話が大好きなので、本作の二人(貴公子とマルコくん)は二人とも元気いっぱいで(語弊がある)非常に良かったです、はい。

あと、監督は黒塗り高級車になんか恨みでもあるのだろうか???ぴっかぴかの高級車でカーチェイスして派手にぶつけて壊すよね~~!!いやわかる、分かるよ、下手にカラフルな車を並べるより画面が引き締まってかっこいいもんねえ!曇天に疾走する真っ黒い車列!どれが誰の車か分かりにくくなるから撮影の工夫が要るところもいいよねえ!やっぱホットな男女には黒塗り高級車が似合うよねえ!!………”魔女”シリーズでもやってたよな(『新しき世界』は言わずもがなだよ)……。

あとあれだ、今どきの美女がゴツいカーアクションをやるのも監督の癖(ヘキ)だよな、たぶん。いやそりゃあ現代のエンタメで女性が運転上手いのは普通だけど、タイミングとかテンポにすごい癖があるというか……ちょっと観客の想定より早くて強いんだよ、踏み込みとステアリングが。たぶん。それを育ちの良さそうな若い女子がやるのが面白いんだよな、いいぞもっとやったれ、てなるもんな。なるよね?

それから、白皙の制服美少女が悪だくみするのも華奢な手に銃を構えるのも、監督の癖(ヘキ)だろこれ、と思いましたが皆さん(皆さん?)はいかがでしょうか。

よく考えたら真面目でちょっと不器用な薄幸青年が、高級車を乗り回す敏腕弁護士の美女やお金持ちの孤独な美少女と出会うのにロマンスの欠片も発生しないの、もはや監督の手癖だろ、という感じがしてそれも大変よいですね。その代わりに胡散臭い稼業の口数が多いハンサムの男友達ができて良かったね(また言う)。

大富豪の擁する黒服集団も眼福でしたね!しかも装備が散弾銃!!あえての散弾銃、なぜに??と思わなくもないが(そして黒服のお兄さんたちはいつ装填していたのか、装填係がいるのか)銃口が大きくて絵面が派手なのと、銃声も野太くて(ズガーン!!ていう)映画的に盛り上がるから、とかですかね。アサルトライフルとかのパパパパ、みたいな銃声も数が揃えば賑やかで悪くないけど、監督の好みではないんだろうね、分かるよ!!

中盤で、ベテラン秘書と新聞屋さんが死ぬシーンあるじゃないですか。なんか私有地の荒野で大変なことになるやつ。あの場面でさ、キム・ガンウ演じる御曹司が銃を構える背景に黒服の皆さんがびしっと並んでるんだけど、頭の高さがマジでぴったり水平に揃ってるんだよね。で、あれ、背の高さが同じ人を揃えてたの?そうだったっけ??と思って続く場面で確認したら、立ち位置の微調整とカメラアングルでそう見せてると分かった時にはさすがにぞわぞわしましたね。か、監督…!!てなった。たぶんだけど、ショットごとに微妙に黒服さん達のポジションを変えてるよね?あのシーンを確認するためだけにまた本編を観たいが、ちょうど上映が終わりつつあるタイミングなんだよなあ。うーん。

ちなみに給与所得者であろう黒服の面々とは対照的に、本作では冒頭にちょっとしか出てこないが自営業っぽい裏社会の皆さんのスタイリングも派手で素敵でしたね!あのチャラくてぴかぴかしてるのに重厚感のあるスタイルと血の気の多い死に方で、ああパク・フンジョン監督の映画だなあと思って初っ端から嬉しくなっちゃった!なんかこう、流血の表現とか効果音の入れ方とか、独特の重さと面白みのある暴力描写だよね。

暴力描写といえば、血みどろの暴力と爽やかな笑いの緩急がこれまでの監督作よりも分かりやすくてエンタメとしての完成度が高く、ファン層を広げそうな作品でもあるな、と思いました。キム・ソンホのラブコメ作品が好きな人が観ても大丈夫、的な狙いがあるんだろうか、とか。いや本当に大丈夫かどうかは知らんけど。

しかしこうなると俄然、「貴公子」のオリジンが気になりますね?スピンオフ前日譚、どっかにありませんか??監督???ちょっとそこでジャンプしてみ????

はい!

ということで『貴公子』の好きポイントでした!面白かったから流血描写が大丈夫な人は機会があったら観てね観てね!正反対の青年二人が友情を深める話だよ!(そうだっけ???)

では~~!!!