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映画「ソウルメイト 七月と安生」を観て隣国の同世代に連帯の挨拶を送る

こちら、同監督の「少年の君」と合わせて年明けにはDVDリリース予定なので良かったらどっかで観てね~!!!!!

寒波襲来!!年末ですね!!!みなさまご無事ですか!!!今年観た映画のベストテンを考えていて、そういやこの映画については何も書いてなかったな!?ということに気付いたので大急ぎで記事をこしらえます!もうね、自分の記憶力とか何もあてにならんからね、考えたことは書いておくに越したことはないのよ。ほとんどライフログ代わりなのよ。

そもそも、地元の劇場でかかるまでタイトルさえ知らなかった「ソウルメイト 七月と安生」を観に行くことにしたのはなぜかというとですね。

まず、「少年の君」が第93回アカデミー賞国際長編映画賞ノミネートで話題になって、今年になって日本で公開されて、その恩恵を受けて(おそらく配給会社が一緒に買い付けて)劇場公開がかなったのが「ソウルメイト 七月と安生」なのですね。で「少年の君」が都会のほうで公開されてその評判は耳にしていたので、地元に来たら観に行くか~とは思っていたのが、他の映画を観たときに「少年の君」の予告編で泣いてしまい、こりゃ大変だ、「ソウルメイト」のほうも観なきゃ、と思って出かけたのが英断だったというわけです!えらいぞ自分!

こういう出会いがあるから劇場通いは癖になるよねえ~~!!その代わり今年は人間生活がマジで終わっていたがな!!!人間になりたい!!!

閑話休題

そういうわけで、なんかまあまあ油断してでかけたら(こいついっつも油断してるな)ちょっとびっくりするぐらい深々と刺さってしまって、エンドロールで呆然としてしまったのでした。1回しか観れてないので確信はないけど、エンドクレジットのスペシャルサンクスっぽいところに岩井俊二が挙がっててなるほどなー!てなったのでそういうのが好きな人にも届いて欲しいですね。まあ私はこっちのほうが好みだが…たぶん同時代性が大きなポイントだったので、2021年に観れて良かったです。

タイトルの「七月と安生」はポスターにも映っている二人の女性の名前で、現代中国を舞台にした、対照的な二人の友情を描いた物語なのですが、時系列と劇中劇を錯綜させたミステリー仕立ての語りがめちゃくちゃ上手くて、冒頭から一気に物語に引き込まれます。幼い頃から仲良しだった二人は、何を夢見て、どんな人生を歩んだのか?彼女たちは幸せになったのか?二人はいま何を思っているのか?様々な秘密が少しずつ語られて、最後まで観終わって物語全体の仕掛けが明らかになったときに、いやすごいな?と思わずにいられません。ほんとに。その仕掛けが、単なる作り手の遊びとか腕試しではなくて、主人公たちの心情に寄り添うために必然的に要請された技術であるというのもよく分かるので本当にすごい。"物語の魔法"を感じる語り、端的に好みですね…好き(告白)。

それでその仕掛けや鮮烈な語りを彩るスタイリッシュな画面ですよ。これは「少年の君」でさらに洗練されていたんですけど、瑞々しくて弾むような思春期の輝き、不安と閉塞で塗りつぶされそうな、それでもきらめくように美しい青春の思い出、少しずつ未来が閉じていくような青年期の焦燥、そういうのが全部、一瞬ごとに、画面のすみずみにまで鮮やかに映し込まれていて、観客は主人公たちの人生を、その想いごと追体験するような気持になるのです。

あとですね、これは観客として非常に幸運だったと思うのですが、私自身が主役の二人と同世代で、自分が日本の地方都市でパッとしない思春期を過ごしていたのと同じ時代を生きた中国の女の子たちの話、というのがもうどうしようもなく刺さった。日本以上に経済発展に地域差がある中国で、安定した生活を望んだり、都会での成功と自由を夢見たりする少女たちの目を通して、現代中国の等身大の陰影を垣間見れたのもとても良かったです。何かになりたいけど何者にもなれない自分と折り合いをつけたり、両親や友人たちや恋人との関係が少しずつ、けれど不可逆的に変化したりといった、誰もが必ず経験する痛みを丁寧に描いて普遍性を獲得しつつ、それらが中国社会の様態と密接に結びついているということに目配りが行き届いている脚本・演出になっていて、だから余計に、近くて遠い隣国で、あの頃、それぞれに思い通りにならないことばかりの状況を、生き延びてきた女の子が確かにいたのだという事実が繊細なリアリティを伴って、自分自身が抱えていた切実さと重ねて胸がいっぱいになるのです。

彼女たちが、満たされてるけど物足りない地方都市で過ごす思春期を経て選んだ、あるいは選ばされた生き方を、それが良かったかどうかなんて誰にも決められないし、この映画ももちろんそんなことはしない。ただただ優しく寄り添うだけで、それがもどかしくて、ああ、女の子たちの友情や連帯や親密さってこういう優しさがあるよなあ、と思ってまた二人への愛おしさで泣きそうになる。

さらにさらに、この物語を語る緻密な脚本と鮮烈な演出に、最高の演技と存在感で応える主演の二人の良さがもうすごい。しぐさや表情のひとつひとつ、さりげないセリフにのせられた繊細な感情の揺らぎ、すべてがかわいらしくて美しくて切なくて、観客はすぐに二人のことを好きになる。だから二人の友情、互いを大切に思う気持ちそのものに感情移入してしまってもうダメなんですよ。一人ずつじゃなくて二人だったからこそ、いつか一人でも辿り着ける暖かい場所を目指す、そのかけがえのない道のりを、観客も一緒に歩むことになるのです(号泣)。うわー--ん!!!みんな幸せになれ~~~!!!!

ということで女子たちはみんな観るといいよ!「少年の君」もとっても良かったから一緒に観たらいいんじゃないかな!!!!

書いてたら思い出し泣きしてつかれたからこの辺で!!!

では!!