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今のところ映画の話をしています

映画「エターナルズ」を観て腑に落ちなかったところのメモ

本稿では!!

ネタバレを!!

しますので!!!

劇場公開してからまだ日が浅いので大変申し訳ないんですけど、書かないと忘れるから!!!

もちろんしっかりした批評は他の人が書いておられるので…そちら読んでいただければ…個人的なおすすめはこちら↓です。いやもうみんな読んだと思うけど…

saebou.hatenablog.com

 

上の記事がなぜおすすめかというと、色んな人が褒めているこの映画の美点がほぼ網羅されてるな~と思ったからですね。この記事や、他にもいろんな人が褒めてるポイントには全面的に同意なんですよ。俳優陣はみんな驚くほどフレッシュで、個性的で、新しい魅力にあふれていて、キャラクターの枠を超えて俳優のことを好きにならずにいられない、それこそが監督の手腕なのだと思います。また、野外ロケ中心の、自然光を活かした壮大で詩情あふれるロングショットも期待通りの仕上がりでした(ただ先に「DUNE」観ちゃったからどうしてもその辺は比べてしまうね…)。

で、そういう美点を踏まえてなお、個人的にどうしても腑に落ちないというか乗り切れなかったポイントがいくつかあって、そのあたりの納得のいく解釈をまだ見かけていないので、腑に落ちないんですけど!!ということを言いたいだけの記事です。みんなの意見を聞いて(読んで)考えが変わったら追記するかもしれません。

※読み返したらほぼ言いがかりのような気もしてきた!もう知らん!!

※※

とにかく最初から最後まで気になったのは、七千年生きてて少なくとも5千年前から地球上で戦ってる割には戦闘スキルの練度が低い!!!ということですね!メンバーそれぞれが特殊能力を持っている設定だし、諸条件は違えどずっと同じ敵と戦っているので、そんな正面突破で各個撃破じゃなくて(そのせいで戦闘向きの能力を持ってるメンバーだけがやたら目立つ)もうちょっと戦略的に戦えば…??と思いながら見ていた。高速移動ができる人が、移動速度は普通だけどタイマンバトルに強い人を連れて敵の意表を突く、みたいなことは誰でも思いつくじゃろ。そういうのが無いせいで、他のシーンで仲間意識を演出されても違和感があるのじゃよ…いや命張ってる場面で個人戦やっといて、日常シーンで家族だよ、みたいなこと言われても…。セナの能力もさあ、まさか"どんな武器でも具現化できる"だとは思わなかったよ、せいぜい"出し入れ自由"くらいかと思ってた。そんなに武器のバリエーションが豊富ならもっと創造性に富んだ戦闘を見せてくれよ、と思ってしまいますね。

ただ本作、クロエ・ジャオ監督を起用した時点でアクションではないところに新味を出したかったのだろうということで、じゃあ人間ドラマとしてはどうか、と考えるとですね。

優秀な人材が揃ったプロジェクトチームの人間ドラマとしてはリアルかもしれないけど、あの人たち人間じゃないから!!5千年以上同じメンバーでチームを組んでたメンツでそんな中間管理職の悩みみたいなこと言われても。むしろそのチームメイト間の齟齬が数千年にわたって顕在化しなかったことの方に興味が湧きますけどね。だってみんな別に地球に来てからはパーソナリティは全然変わってない。オープニングシーケンスはそういうことでしょ?やっぱ長命種は思考のスパンが長いのか??悩んでる間に地球人類が滅びそうですけど????「リーダーに相応しいのは君だよ」って、5千年かけて他人から言われないと分からんか!?!?その時点でリーダーの素質に不安が残りますけど!?!?ってなるわけです。5千年を跨いだ不和が五日間で解決かよ。なんだそれ。「なぜ私(お前)がリーダーなの?」じゃねーんだわ、いや元々(アベンジャーズみたいに)別々に活動してたのが急に集まったならそういう葛藤も分かるけど、君たち数千年間チーム組んでたじゃんか???今まで何してたん???イカリス、お前も千年以上ナンバーツーやってたらわかるだろ、あ、こいつ俺に継がせる気ないな、って。昨日今日気付いたみたいな、思春期の少年みたいな振る舞いはなんだ!!大学生の部活か!!

それだったら人類史の危機のたびにメンバーを入れ替えながらチームを組んでて、新旧メンバーが混じってる方がドラマとしては自然だったのではないだろうか、と思いました。後知恵ですみません。

エターナルズ、それぞれに様々な悩みを抱えていたけど個人的に一番キツかったのはスプライトの孤独ですね…。あの姿で500年も人間に交じって生きるのは確かに辛い、よく人類を見捨てないでいてくれたわね…イカリスがいたからか。ていうかエターナルズの面々、誰かスプライトの孤独に向き合ってやれよ。そんな「初めて気づいた」みたいな顔されても、え、五千年間気付いてなかったの!?ってなるじゃん、「ポーの一族」「人魚の傷」「火の鳥」シリーズ読んでから出直してこいや、っていうね。だからスプライトは本当はエイジャックと住んでたほうが良かったのかな、でもイカリスの傍にいたかったのかな…とか考えたら悲しくなってくる。救われなさがひどい。

そういう意味でちゃんと時間の重みを背負ってたキャラ、セナとスプライトだけなんだよな。いやそれも七千年分かと言われると微妙ですが…700年くらいかな…なんとなく…。

ラストバトルの勝利条件も分からなかったしな。だいたい数千年生きてて初めて発動した能力を受け入れるの早すぎるんよ。特に予兆も無かったし(見逃してたらごめん)。自分自身が、無意識のうちに自分の能力を抑圧していた(からその解放を受け入れるのは容易だった)というなら、そういうシーケンスが(一瞬でもいいから)要るんよ。どう解釈していいのかよく分からんかった。結局リングは使ったのか使ってないのか!?なんであの巨人のパワーまでもらえたのか!?これは紛うことなき悪口ですけど、ラストバトルの分からなさ、「トランスフォーマー/最後の騎士王」と同じくらいだったよ!!!!そこが分からなくても映画全体のストーリー解釈には影響しないからまあいっか、ってなるところまで一緒だよ!!!

だいたいディヴィアンツはなぜあれで人類の発展を阻害できるんだ、人口増殖のスピードがちょっと減速するだけじゃんか。もうちょっとクレバーに介入してくれや。そしたらエターナルズの"真の任務"の意外性ももうちょっと演出できたのではないだろうか。知らんけど。

人類史のつまみ食いもな…まあこれは広島の原爆が出てきたから気付いただけで、あれが無かったら今まで通り何も気にしなかったかもしれないので、ちょっと厳しすぎるかもしれん。でも気付いてしまったものは仕方ない。あーあ。ただあの人類史ダイジェストをやるためにも、メインキャストの多様性は必須だったですよね。あとイカリスみたいなオールドファッションなヒーローの退場も必然ですね。…とはいえ。原爆もそうだけど、ある時代の社会集団が致命的に傷つく原因って、天災以外だと別の集団の侵略じゃないですか。エターナルズが介入したところで、そこの文明の最良の部分を棄損したのはどこの誰ですかね、って思っちゃう。何を守ってるのか分かんなくなるんよ。たぶん、ディヴィアンツがああいう感じで局所的に出現するだけなら、人類、滅びないからさ。あえてエターナルズが戦う必要があるような敵に見えなくて、でもその理由付けのためだけに歴史の中に置いてみました、という風に見えてしまうんよ。その状態で原爆だけが人類の罪みたいに言及されても。あと、人類は愚か…っていうの、広島の原爆まで気づきませんでしたか!?っていうのもありますね。5千年の付き合いでそれはないでしょ、って思うわ、愚かな人類としてはさ。道具を持たせたら最高の(最悪の)使い方をするのが人類でしょうが。

その他、しょうもない腑に落ちないポイントとしては、地球人類に介入するからエターナルズが人類型なのはまあいいとして、エターナルズ同士の愛情表現も人類と一緒なんだね…ていうのが。地球に来てから学習したのかしら??そのあたりは原作の世界観というか、キリスト教的な、神の似姿としての人間、みたいな価値観の表出なのかもしれんが、そうするとこの映画が謳う”多様性”も大したことねーな、ってなっちゃうからどう考えたらいいか分からん。ほんとに分からん。

要するにSFとしては作り込みが甘いんだよな~~~!!!たぶんそういうことだわ!!!脚本もうちょっと頑張ってくれ~~~~~

ただここまで書いて思ったけど、単に監督の作風と自分が合わないだけかも(いまさら)。「ノマドランド」のときも、あのテーマを美談っぽく扱うの、どう観たらいいか分からなくて戸惑ったんだよな。登場人物たちの主観として美談なのと、外から見て美談なのは分けて欲しいというか、疑似ドキュメンタリー風味だったから余計に気になったのかも。客観性を装うところの意図を掴みかねたというか。

ていうかもっと突っ込みどころのある変な映画は他にもたくさんあるのに、なんでこの映画だけこんなに気になるのか自分でも謎。なんだろう、MCUっぽいところ(ラストの引っ張り方とか)と監督の個性が暴れてるところがはっきり別れてしまってて気が散ったからかな?鑑賞中に気が散ってる時点でちょっと相性が良くないわね、という気がしますね。

ところで今後はどっかでシャン・チーとクロスオーバーがあるのかな!?楽しみですね!!!!ていうか監督は変わるの?続投??どっちにしても難しそう!!!!

では!!!!