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今のところ映画の話をしています

2022年、クリスマスシーズンにクリスマス映画が充実していた話

クリスマス過ぎたけど…書きかけたのでやりますよ、クリスマス映画の話。

12月に入ってから観た映画で、例年になくクリスマス映画がたくさんあったのでまとめてメモっておきたくなりました。で、今さら気付いたんですけど、ぜんぶ英国が舞台だったね。伝統を見せつけられた感があるわ。

観た順だよ!ネタバレはしないつもりだよ!

「サイレント・ナイト」

人類最後のクリスマス!という一言がすべてを表しているSFブラックコメディだった。もう少し脚本を練ってくれても良かったけど、気付けてないネタがあるような気もする。

大人たちが現実から目を逸らしながらいつものクリスマス以上のバカ騒ぎをしている横で、それに追従すべきか迷っている子供たち、というスタンダードな設定ながら、大人たちのバカさ加減の描写が秀逸で面白かったです。妙に見栄っ張りなところがイギリスっぽい(偏見)…とか。あとさすがにキーラ・ナイトレイは芸達者だし、心優しくチャーミングだが微妙に責任感の薄いマシュー・グードもナイスキャスティングであった。マシュー・グードは「ゴヤの名画と優しい泥棒」でも印象的な役を演じていたね。

で、後半から物語の中心に躍り出る少年、どっかで観たことあるな??と思っていたら、「ジョジョ・ラビット」で肝の座った名演技を見せていたローマン・グリフィン・デイビスくんであった。さすがやで。ご家族そろって映画一家だし、本作に出ていた双子の弟、本当の弟だった。おお…みんなでイギリスの映像エンタメ界を牽引してくれよな…。

そういえば、作中でやたら色んな名作映画への言及があって、楽しかったけどなんで??ってなりました。クリスマス映画にはそういう伝統があるのだろうか…(知らん)。

本作のオチは、バッドエンドかハッピーエンドかで意見が分かれそうな気がしますね。自分はハッピーエンド派です。メリー・クリスマ~ス!!!

 

「グリーン・ナイト」

クリスマスで親戚の集まりに出てきた惰眠を貪る放蕩息子は、試練の旅から無事に帰還できるのか?うーん無理かも!

中世が剣と魔法と血族の世界だというのは、日本も英国も同じなんだねえ、と思いながら観ました。いまいち近代人の理屈に合わない感じで起承転結が進むところとか、教訓話のはずなのに特に教訓が見出せないところとか、日本の中世の説話集っぽい。

自分は後から元ネタの粗筋を知った派なのですが、本作ではかなり大胆に翻案していて、それでも物語の骨格が揺るがないところもそれっぽい(高畑勲の「かぐや姫の物語」みたいな)。

重厚に作り込まれた画面と、フレッシュな魅力を放つデブ・パテルやアリシア・ビカンダーのバランスが良くてひたすら眼福でしたね。ドレスとか宝飾品の数々、隅々まで素敵だった…。

たくさんのメタファーというか、伝統的なモチーフが詰め込まれていて分かる人が観ればものすごい情報量なんだろうな、というのは感じつつ、教養が足りないのでそのへんはさっぱりなのであった。あ、でもキツネを信用しても大丈夫かどうかくらいは分かるよ、どれだけモフモフで可愛くてもキツネだからね!

最後がどうなるのかぜんぜん読めない(なんせ説話集だから)のですが、ラストの仕掛けが凝ってて、ちゃんとカタルシスがあって面白かったです。ガウェイン卿に栄光あれ!ハッピー・ニューイヤ~!!!

 

「スペンサー ダイアナの決意」

年末年始に親戚の集まりに顔を出すのが億劫な皆さん、それのもっとヤバいやつだよ!自分はまだマシかもね!(そんなことはありません、ひとにはひとの地獄だよ)という映画。え?…ガウェイン卿はその億劫さをバネに試練の旅へ出かけたけど(前項「グリーン・ナイト」)凡人はなかなかそういう訳にもいかないよねえ。

欧米ではクリスマスおよび新年というのはとにかくすごい大事な行事で同調圧力がヤバい、というのは耳にする話ですが、その総本山ともいうべき英国王室のクリスマス休暇ともなればそりゃ想像を絶するでしょうねえ…というのを垣間見ることのできる映画でしたね!

タイトルが”スペンサー”なのは、主人公のダイアナが、本作で描かれる休暇のあとに離婚して、スペンサー家の一員として生きることになるからなんですね。なるほどね。日本語サブタイトル、頑張ったね。

いくら名門貴族の出身といえども、王室が要求する全人格的な献身というのは耐えがたいものなんだな、としみじみしました。庶民からはどっちも雲上人に見えるけどさ。過去の積み重ねで出来た伝統の重み(というかそれを維持するための非人間性)に潰されそうになりつつ、過去に生きた人間との絆が生還のきっかけになるという構成が良かったです。どこまでが創作なのか分かんないけど…ドキュメンタリーのほうも観ればよかった。とりあえず、ナイス・ホリデ~イ!

 

ひつじのショーン スペシャル クリスマスがやってきた!」

なんならこの2~3か月でいちばん待ち遠しかった映画だよ!(そんなに??)

しかしクリスマスともなると、あの牧場主さんでさえ家族が出てくるのビビるよな。いやいいんだけどさ…いや確かにテレビシリーズでも出てきたことあったな…ふーん…みたいな。

クリスマスがテーマの新作は30分とコンパクトな中編ですが、新しめの話題と伝統的なクリスマスイベントと大量の名作映画オマージュを詰め込んだ、見どころたくさんの佳品でしたよ!「スノーマン」「ホーム・アローン」「バック・トゥ・ザ・フューチャーPARTⅡ」は分かったけど、他にもありそうだよね。本シリーズが映画パロディをあの手この手で盛り込むの、やっぱり子供たちにとっての”初めての映画”になり得る存在として、映画文化への案内役になろうという自負があるのかな、と思いますね。

気になるのは、犬のビッツァーがスキーで木に激突しなかったところと、人間の家族の家が和風趣味だったのは、なにか元ネタがあるんだろうか?ということです。マジであれは何だったのだ…???

テレビシリーズから冬の短編3本も併映されてたんですけど、大画面で観ると人形やセットの質感が堪能できてとても良かったです。拡大すればするだけ情報量が増えて新しい楽しみ方ができるの、”実写”の強みだよねえ。NHKで再放送してくれないかなあ!

ところでクリスマスパーティの定番!みたいな感じで色んな作品に登場するジェスチャーゲームなんですけど、本当にやたら見かけたので、そんなにメジャーなん???と思って調べてみたら、どうやら英国王室のクリスマスの伝統のひとつらしいわね…(ロイヤルクリスマス | Central London | Rose of York Language School)。なんでも、エリザベス二世がまだ王女だった1941~44年に、第二次世界大戦に出征した兵士のためのチャリティーイベントとして演劇を上映したのがルーツらしい。なんか日本語のまともなソースが見当たらないんだけど、たぶんホントっぽい。

ということは、戦後にメジャーになった慣習だな?どおりでアガサ・クリスティー作品とかで読んだ記憶が無いわけだよ(あったらごめん)。

はい、ということでクリスマスシーズンに観たクリスマス映画の話でした!おススメは「ひつじのショーン」です!!

仕事が納まらないのにクリスマス気分を引きずっている場合ではありませんのでこのへんで!!(いま「ポーラー・エクスプレス」を観ながらこれを書いています、クリスマス気分を終わらせる気が無いんか??)

では~~!!!